「母と並んで立つキッチン」by id:TinkerBell


母が東北にボランティアしに行きました。
一週間は帰ってきません。
いつもは手狭に思えるキッチンですが、一緒に立つ人がいないと、なんだか隙間が空いたような気がします。
もちろん今までも一人で料理する事の方が多かったのですが、あらためて一人で立ってみると、私が大好きなのは「ねぇ、ちょっと味見して」なんて気軽に声をかけあえる、母と並んで立つキッチンだったんだなぁと思います。


料理というのはひとつの創作です。
創作は出来上がった作品だけでなく、作っていく過程もクリエイティブ。
だから、それを一緒に研究し合ったり、お互いの新しい技を披露し合ったり出来る相手がいると、何倍も楽しくなります。


様々なテーマに取り組んでいくお料理研究は、キッチンがまるでクラブ活動のよう。
料理と名が付けば、郷土料理からフランス料理、お菓子作りまで、何でもやっちゃう。
そんな中から色んな新しい「わが家の味」が生まれました。
たとえばこれからの季節は、四川料理に学んだ辛さが爽やかな夏カレー。
四川料理は特に多彩な香辛料を特徴としますが、それは四川が多湿で夏冬の寒暖差が激しい土地柄だから。
日本の梅雨時や夏も同じですよね。
こんな語らいの中から「四川料理のスパイス使いをカレーに応用」のテーマが生まれ、わが家独特の夏カレーに発展していきました。


お客様をお招きする時は、特にキッチンが活気づきます。
おもてなしのテーマを考え、テーブルセッティングから料理までを総合的にプロデュース。
特におもてなし料理は家庭料理と違って「非日常」を楽しんでいただくものですから、どんな非日常に出会っていただくかが大切なテーマです。
たとえ簡単なお酒の肴だって、工夫しだいで色々な驚きを楽しんでいただけるはず。
そんなアイデアに二人して全力投球です。
もちろん母の友人や私の友人を招いてのイエレストランごっこや、お料理研究会も楽しいです。


でもやはり一番楽しいのは、日常の食事を二人して作っている時。
お互いそれぞれの動きが読めていますから、全く料理に関係のない世間話をしながらでも抜群の連係プレー。
心が通じ合ってるなぁって感じます。


もちろん母とのティータイムもキッチンで。
暮らしの幸せを生み出していく場所でのひとときは、とても優しい時間が流れていきます。
あはは、こんなことを書いていたら、いい歳をして、ちょっと母が恋しくなってしまいました。
帰ってきたらどんな夕食で迎えるか、今のうちから研究しておこうかな。
キッチンは、母と私の二人のお城です。


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