「ベランダが私のアトリエ」by id:tough


近ごろ油絵を楽しんでいる私ですが、油絵は描く場所に困ります。何と言っても油が臭い。油絵に使う油には色々種類があって用途や目的によって使い分けますが、中にはすさまじい臭いのものもあるのです。窓を開ければ済むかと思いましたが、やはりかなり後まで臭いが残ります。


また、伸び伸びとした絵を描くには、どうしても部屋という閉鎖的な空間がイメージ的に邪魔をします。もっと広々した所で描きたいなぁと思いましたが、場所がありません。そこで思い立ったのがベランダでした。そんなに広いベランダではありませんが、それでも外に向かえば、手狭な私の部屋よりも、ずっと視界が広々です。もちろん油の臭いも気になりません。


何より素晴らしいのは、太陽光の下で色が扱えることです。演色性(光による色の見え方)は自然の太陽光が基準ですから、これが最高の色の見え方ですね。


ベランダには、プランター栽培ですが、色々な植物たちが並んでいます。こんな市街地ですが、緑を求めて小さな虫たちもやってきます。明るい日差しの下で自然の風を受けながら、そんな楽しい訪問者と一緒に過ごす時間はそれだけでも癒しの時間。拙い絵も伸び伸びとしてきて、室内で描くよりずっといい絵が描ける気がします。


根を詰めて描いていると、けっこう体がこわばります。そうしたら立ち上がって、軽く体を動かします。うーん、気持ちいい。すーっと息を吸い込んで深呼吸。部屋の中では油の臭いで、とても深呼吸どころではありませんね。この気持ちよさもベランダならではです。


時々道行くご近所様が「いいのが描けますか」などと声を掛けてくれることもあります。最初はそれが恥ずかしかったのですが、いつの間にか慣れました。


「近所の景色を描いてるの〜?」「いえ〜、先月写生しに行った山の景色の続きをね〜」「へ〜、どこ行ったの〜」「棒ノ嶺〜」「ありゃぁいい所だねぇ〜」「天気良かったんで景色がきれいでしたよ〜」


こんなふうにご近所様とのコミュニケーションも弾みます。


描いているといつの間にかカンバスの上の絵に引きずられて、本当に描きたかったイメージがぼやけてしまうことがあります。そんな時は目をつぶって、自然の風を感じてみることにしています。すると再び描きたいイメージが鮮明になってきて、途中で行き詰まることが無くなりました。


最近は少し水彩も描いています。雨の日は水彩の小さな絵。ざざざっと紙の上に木炭で素描して、その上に淡彩で色を乗せていくような描き方が好きです。雨の日は水彩日和。ベランダで育てている植物などがいいモデルになってくれます。


頭の上に洗濯物がはためいていることもありますが、それもまた良しのベランダアトリエ。私の大好きなお気に入りスペースです。


»このテーマの投稿コメント一覧はこちら。