「〈頑張れの代わりになる歌〉で励ましてくれる父がいるイエ」by id:tough


先のいわしで「頑張れの代わりになる歌を集める」という通年サプリを書かせていただきましたが、実はこれにはもうひとつの切っ掛けがあったのです。友人の事情に関わることですから詳しく書くわけにはいきませんが、とてつもなく素晴らしい夢を持っている友人がいました。その夢は私の理想とも重なることでしたので、ずっと応援し続けてきました。しかし、夢半ばで彼は東京を離れることになってしまったのです。実家の事情で、どうしても家業を継がねばならなくなってしまったからです。


彼が東京を去った後、私はかなりガックリきていました。いつまでも親友だから、そのうち必ず会いに行くから、その時はきっとお前の新しい未来像を見せてくれよと明るく見送りましたが、正直落ち込みました。本当に辛いのは彼の方なのに、私までが自分の夢を摘み取られてしまったような虚無感に襲われました。


そんな時、父が愛用のギターを掻き鳴らしながら、一曲の知らない歌を歌い始めたのです。昔のフォークソング世代の父にしては、かなり新しい感じの曲でした。何気なく聞いているうちに、歌詞の内容が心に染み込んできました。


何それと聞くと、いい歌だろう、若いミュージシャンなんだけど、父さんと同じハミングバードで歌ってる人がいてね、気に入ったので覚えてみたんだよとのこと。ハミングバードとはギターの名前。もちろん父のは国産のコピーモデル、向こうはプロですから本物だと思いますが、父はとにかくそのギターが気に入っています。今までも、同じギターを使っているという理由だけで、たびたびCDを買ってきたりしていました。でも今回は、それだけの理由ではないと直感しました。歌詞の内容が、あまりに今の自分にぴったりすぎたからです。


東京を去っていった友人は、わが家にもよくやってきていました。父も交えながら、酒など酌み交わしつつ夢を語り合ったことも一度や二度ではありませんでした。ですから私たちに起こったことのだいたいは、父も知るところとなっていました。そんな私に聞かせたくて、この歌を覚えたに違いないと思えたのです。


その歌、俺にも教えてよと父に頼み、一緒にギターを弾きながら歌ってみました。いい曲です。あぁ、そうなんだ。自分も彼も、まだまだ目標や希望に向かって赴いていく途中。失った物を数えるだけでなく、今ある希望、これから手にする希望の数も数えていこう。まだ自分は彼と手を取り合っている。形は変わっても、夢の本質は変わらない。父にその歌を教えてもらいながら、そんなふうに思えるようになってきました。今度彼に会いに行く時は、ギターを抱えていこう。そしてこの歌を一緒に歌おう。そう思いました。


親というのはありがたいものです。時には、世代が違う、考え方も違う、わかりあえるはずがないなどとも思ってしまいますが、本当は誰よりも子供の本質を理解し、見つめ続けてくれている人なのですね。こんな親のいてくれるわが家に、心から感謝しています。


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