「あかい花」by id:offkey


うちの父は尻が落ち着かないというのか、なにかやることを見つけてはちょろちょろ動き回っているタイプなのですが、そんな父とは対照的にゆったり構えている母は、時におだて、時にしかりつけながら父の少々軽薄な部分をしっかり補っています。また父は少し臆病なところのある母の良き保護者。こう書くとなんだかお互い助け合う穏やかな夫婦みたいに聞こえますが、実際はといえば、父の妙な思いつきに母は叱咤し、父も負けずに母のいうことなどおかまいなしに物事を行なったりと、決して穏やかとはいえないやり取りをしながら生活しているようです。
性格が正反対とはいわないまでも、かなり違う二人。しかしながら、どこか趣味や価値観に似たところがあるみたいで、仲良く家庭菜園をしたり、旅行に出かけたりしています。
そんな二人だからでしょうか、これは私が大人になって気が付いたことなのですが、両親ともども赤い花が大好きなのです。


もともと母の方は昔から鉢植えをいくつか育てていて、花も赤い花を中心に買っていたので母が赤い花が好きなんだろうということはなんとなく気が付いていました。
なので母の日や誕生日に花を贈るときには、どんな種類の花であっても必ず赤系統の花を選んでいたのです。
しかし、父の方は仕事が忙しかったということもあるせいか、植木鉢にあまり興味を示していた様子はないので、当時どんな花が好きなのかということはよく知りません。
そんな父の仕事もやや緩やかになり、ある程度のひまができるようになると家庭菜園を手伝いながら、時に母と共に車で公園などへ出かけることが多くなってきた頃、ある日、出かけ先から珍しく父が鉢植えを買って帰ってきました。それが赤い蕾をつけていたアデニウム。なんでもこの花が気に入ったとか。
その鉢植えは結局最後には枯れてしまったのですが、その後、聞くともなしに母から聞いた話では
「お父さんはね、花麒麟の花がすきだっていってたんだよね」
花麒麟はずっと家にある鉢植えです。母が好きだから育ててるのだとばかり思ってましたが、父もその花がすきだったらしいのです。


さらにその後、家族全員で園芸店へ出かけることがあったときに、父が「この花綺麗だね」というのは決まって赤い花。
私はやっと父が赤い花を好きなのだということを知りました。
それが母からの影響なのか、父がもともと好きだったのかはいまだにわかりませんが、二人とも赤い花が好きなんて、やっぱり夫婦なんだなあと妙に納得したことを覚えてます。


私の兄弟は私を含めてみんな口が悪いので、たまに両親の花の趣味のことを「赤い花が好きなんて野暮だね」なんてからかったりもしますが、それは口だけ。同じ色の花を好きな二人が仲の良い証拠だと思ってそんなことを言ったりします。
今日も両親の部屋には花麒麟の赤い花がかわいらしく咲いています。


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