「早春の味、サヨリby id:watena


春告魚と呼ばれる魚は色々ありますが、サヨリも春告魚、早春魚などと呼ばれます。水揚げが多く価格もこなれてくる「旬」より、まだ水揚げが少なく価格が高めの「はしり」の方が目立ちますから、サヨリを冬の魚だと思っている人もいるようですが、本当に旨い旬は3月から5月頃まで。早春のサヨリは絶品です。


旬のサヨリの最も旨い食べ方は刺身でしょう。淡白で癖のない上品な味は、まず刺身で味わっていきたいものです。といってもスーパーなどではあまりサヨリの刺身は見かけませんから、新鮮な物を見つけて自分で刺身におろす必要があります。
サヨリの鮮度は、まず体表で見ていきます。透明感ある艶のよい銀色であれば、第一段階はクリアです。
次に腹を見ます。腹がぶよぶよしている物は鮮度が落ちかかっているしるしです。しっかりと締まった腹をしていれば、第二段階もクリアです。
ここまではほとんどの魚に共通のチェック項目ですが、最後にサヨリ独特の鮮度の見分け方でチェックしましょう。それは下あごです。サヨリは下あごが細く長く尖っていますが、生きているサヨリは、なぜかその先端が紅をさしたように赤いのです。この色はしだいに薄れていきますから、鮮やかな紅色なら水揚げからあまり時間がたっていない、つまり鮮度がよい証拠です。
さらに最終チェックとして、売り場で包丁を握っている人に「これ刺身でOK?」と聞いてみれば安心かもしれませんね。
なお、サヨリは北海道南部から九州にかけての日本近海の他、朝鮮半島から黄海にまで生息域が広がっていますから輸入もあります。しかし輸入はどうしても鮮度の点で劣りますから、日本の船が日本の港に水揚げした物であることも確かめておきましょう。


いいサヨリを見つけたら、さっそく刺身にしてみましょう。必要な包丁は出刃と柳刃です。どちらも小振りのものが扱いやすいでしょう。出刃と柳刃は魚をおろす時に必須の包丁ですが、大きな魚用と小さな魚用の2セットを持っていると便利です。
おろし方の実際は、いい動画を見つけました。
http://www.youtube.com/watch?v=ZUl767irZQM
いわゆる三枚おろしです。おろしている最中の話を聞いていると自分で釣ってきた物のようでかなり小振りですが、お店で売っているのはもっと大きな物が中心ですから、動画よりはずっと簡単におろせます。
コツは、わたを取り出したら腹の中を流水でよく洗うこと。まな板も頻繁に水で流しましょう。これがサヨリの上品な味わいを壊さないコツです。
この動画の人は釣ってきたばかりの本当に鮮度抜群の物を使っていますから、そのあたりをかなりアバウトにやっているようですが、流通の段階で時間がかかっているお店の物は、もっとしっかり洗わないと臭みが残ります。
鮮度に自信が持てなければ、最後に皮をはいだ段階で判定しましょう。鮮度が良ければ皮をはいでも銀色が残ります。そういうサヨリなら刺身でいけます。


あいにく皮をはいだら銀色が残らず真っ白けになったという場合は、細い身をくるっと一結びして一口大にし(魚体が大きい場合は適宜切ってから一結び)、湯を沸かして軽く茹で、お椀に入れて三つ葉などをあしらい、塩で調味した出し汁を張ると、これもサヨリの上品な味を楽しむのに最適な吸い物になります。
天ぷらも絶品です。淡泊でよく締まった身の魚ですから、その天ぷらの旨さったらありません。これはぜひ塩で食べてください。抹茶塩などもいいですね。
このように、万が一おろしてみて鮮度に自信が持てなくなったとしても、いくらでも「これはご馳走だ」と家族を唸らせる料理ができますから、ぜひ皆さんもこの海からの早春の便りを楽しんでみてください。


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