「ネズミの言い伝え」by id:watena


ネズミは大黒様のお使いとされ、日本各地に、大黒様とネズミ、あるいは大黒様にまつわる小槌や福袋や米俵などにネズミをあしらった郷土玩具が伝わっていますね。
http://www.footandtoy.jp/event/nezumi/10.html
大黒様は食物や財産を司る神様ですから、台所を守る神様とも考えられていて、昔は台所にネズミがいることは歓迎されたという話を聞きました。ネズミは台所の食べ物を食べてしまいますが、ちょっとくらいは守ってもらうお礼だったのでしょうね。
ネズミが大黒様のお使いと言われるようになったのは、次のようないきさつによります。
大国主命根の国の須佐能乎命の住まいにやって来ると、その娘の須勢理毘売命と出会って、このお二方は互いに一目惚れします。須佐能乎命は大国主命を招き入れますが、蛇がいる室やムカデと蜂がいる室で寝かせたりして、大国主命を窮地に立たせます。その都度須勢理毘売命が予め渡していた比礼(古代装束で女性が首に掛けていたスカーフの様な布)の力で無事脱することが出来ましたが、ついに須佐能乎命は大国主命が矢を取りに入っていった野原に火を放ってしまいました。周囲は火の海となり、逃げ道がありません。炎は迫ってきます。
その時現れたのが一匹のネズミ。ネズミは「内はほらほら、外はすぶすぶ」(穴の内側は広いよ、穴の入り口はすぼまって狭いよ)と大国主命に声をかけました。その言葉にハッと感じた大国主命が地面を踏んでみるとポコンと穴が開いて、その空洞の中に身を隠すことが出来たのです。無事炎はおさまり、大国主命は助かりました。この功績で、ネズミは大国主命のお使いに大抜擢されることになりました。
後に神道大国主命密教の大黒天と習合して、ネズミはそのまま七福神のお一人である大黒様のお使いということになったわけです。因幡の白兎を助けた大国主命をさらに助けたネズミは、たいしたものですね。
昔から「ネズミのいる家には火事がない」、あるいは「ネズミがいなくなると火事が起きる」などとも言われてきました。これはネズミには災害に対する予知能力があると信じられていたためだと思いますが、もしかすると炎の海から大国主命を助けた神話も関係しているのかもしれません。


このほかネズミは子だくさんなので、子孫繁栄の象徴としても喜ばれています。これは日本にとどまらず、たとえばイギリスではウエディングマウスと言ってウエディングケーキのトップに飾ったりすることがあります。また欧米のウエディンググッズには、ネズミをあしらった枕やウエルカムボードなども見られます。


十二支のトップバッターであるネズミはそれだけでも縁起が良さそうですが、調べてみると色々なFORTUNEを運んでくる存在なんですね。今年は国際生物多様性年だそうですので、これを期に改めて長く人と共存してきたこの愛すべき動物を理解し直してみるといいかもしれません。人の暮らしが目に見えない所まで隅々まで清潔なら、ネズミもけっして不潔な動物ではないはずです。


»このいわしのツリーはコチラから