★★(二ツ星)

「にぼうと」by id:chinjuh


群馬には「にぼと」「おきりこみ」などと呼ばれる小麦粉で作った平たい麺があります。お店にもあるんですが、わたしの小さい頃は自宅で作る人が多かったです。おばあちゃんも良く作ってました。おばあちゃんは「ぼ」のところに軽くアクセントがついて「にぼうと」に聞こえる呼び方をしてたのを覚えてます。


作り方は簡単で、小麦粉(薄力粉でいい)に水を混ぜて捏ねるだけ。水の量は作る人によってまちまちかもしれないけれど、粉カップ1に対して水が 1/4〜1/3くらいじゃないのかな。平たくのばして、リボンみたいに幅広に切ります。うどんみたいにコシを出す必要はありません。どっちかっていうとコシがないくらいが普通でした(少なくともおばあちゃんちでは)。うどんとすいとんの中間くらいに位置した食べ物だと思います。


汁はうちでは醤油ベースでした。正確なレシピは教えてもらったことがないので知らないけれど、だし汁に醤油とみりんと酒で味付けた感じのものです。そこに椎茸と人参を細切りにしたのと、ネギが必ず入ってました。シンプルというより、かなり粗末な感じです。その汁に、にぼとの麺を下ゆでせずに放り込んで煮てしまいます。「おきりこみ」という名前は「おっ切り込む」からだと思います。


もとが薄力粉で、下ゆでもしていないので、麺は軽く煮溶けた感じになって、汁にとろみがつきます。こういうのがお味噌汁代わりに食卓に上りました。子供の頃は長ネギが嫌いだったので、にぼともあまり好きじゃなかったです。


山梨や長野に「ほうとう」という料理があって、具だくさんでずいぶん華やかな料理だと知ったのは大人になってからです。群馬の「にぼと」は、たぶん「煮宝刀」なんでしょうね。幅広く切った麺が刀みたいに見えるからかなあ。それともやっぱり刀で切ったのかしら。名前や作り方に共通したものはありますが、思い出の中の「にぼうと」はテレビやネットで見る山梨の「ほうとう鍋」みたいな華やかな料理じゃありませんでした。


小さい頃に嫌いだった にぼうと ですが、大人になった今となっては懐かしくてよく自作しています。去年の大晦日も、にぼとで年を越しました。蕎麦が細く長くの縁起物なら、にぼうとは太くて長いんだからもっと縁起がいいと思います。


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★★ ミシュランコメント

群馬に「にぼうと」という麺料理があるのをはじめて知りました。「ほうとう鍋」とはまた少し違う感じなのですね。おばあちゃまの思い出とともに綴られた文を読んでいると、余計にあったかくて美味しそう〜。はじめて粉からこねてみようかなと思わせてくれるメッセージでした。素朴な日本の味が感じられるこの麺、全国にもっと知られればいいな。