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親子でお風呂なんていうと子供みたいですが、こんな習慣が生まれたのは私が大人になってから。
父が出張で数日イエを空けていた時、
「一人いないと結構寂しいね」
「一人がお風呂に入っちゃうと残った一人はほんとに一人だね」
「じゃ一緒に入っちゃおうか」
みたいな話になったのがきっかけでした。
狭いバスルームですから、大人が二人で一緒に入るのはちょっと窮屈です。
でも季節はちょうど夏。
一人はバスタブでゆっくり半身浴。
もう一人はシャワーを浴びて、ゆっくりゆっくり全身に磨きをかける。
そんなやり方でじゅうぶん二人一緒のバスタイムが楽しめました。
女はお風呂の時間が長いもの。
その時間を同じ場所で共有できるのは、とても新鮮な出来事でした。
なにより、次を待っている家族がいないのですから、全く時間が気になりません。
時間を気にせずほんとにゆったり。
まるで温泉でくつろいでいるような気分です。
「これからは、お父さんのいない夜はこれを恒例にしようか」
「賛成!!」
「お父さんだけ仲間はずれ」
「うひひひひ」
こうして父の知らない母と娘だけのヒミツの習慣が生まれました。
冬場はちょっとやりにくいので季節限定の習慣になりますが、今がちょうどそのシーズン。
「すまん、今日は付き合いで遅くなる」
父から電話がかかってくると、「いいよー、終電まで帰ってこなくて」。
さぁ、バスルームで楽しむ飲み物も用意して、今夜は特別なバスタイムが決定です。
やっと父が帰ってくるころには、二人とも磨きがかかってピッカピカ。
新品同様でお出迎えです。
父は、「二人とも待っててくれたのか」なんて喜んでいますが、べつに待ってたわけじゃないのよねぇ。
二人でゆったり時間を楽しんでいたら、結果的にお風呂上がりがこんな時間になっただけ。
でも、そんなことは言わずに「おかえりなさーい」。
女の長湯で、家族みんなが幸せです(笑)。
こんな話を友だちにすると、あんたんちは仲いいねぇと驚かれます。
私も大人になってからこんな親子の付き合い方ができることって、ちょっと奇跡なのかもしれないと思います。
だから本当に大切にしたいこの習慣。
世界でただ一人の特別な相手との、とびきり特別な時間を過ごす習慣です。