「夏休み、僕のマチ私のマチ探検隊」by id:Fuel


私が夏休みの燃えたことのひとつに、マチの探検がありました。普通ならあまり注目されないようなことを、大まじめに調査して報告書にまとめるのです。


仲間が集まって、探検隊結成式が行われました。「宣誓!われわれはマチを探検して色んなことを発見し、新学期にはみんなをアッと言わせることを誓います!」。そうです、これは私たちが選んだ自由研究の課題でした。


さて、何を探検しましょうか。私たちが最初に取り組んだのはマチの貼り紙探検でした。マチを歩いて貼り紙を見つけたら、その場所と発見番号を地図に書き込み、そして貼り紙をスケッチします。今なら子供もデジカメを持っている時代ですが、このころはそんなの無いので手書きでスケッチでした。


「臨時休業のお知らせ」。夏は個人商店でこういうのをよく見かけました。
「カラスに注意、自転車のカゴを狙います」。これもお店の前で見かけた貼り紙です。
「駐輪禁止」。これは歩道橋の下。
冷やし中華始めました」。真夏でも始めましたのままになっているのが面白いですね。
「犬を探しています」。これはお気の毒。早く見つかるといいですね。私たちも貼り紙観察をしながらそれらしい犬がいないか探しました。
「住人以外ゴミ置き禁止」。アパートのゴミ置き場です。


ほかにも、色々な貼り紙が見つかりました。
「このシール何だ?あっちこっちにあるぞ」
それは宛名用のタックシールみたいな物に、妙な図形が一つだけ印刷された物でした。それが電柱とか、郵便ポストとか、ビルの外壁などにランダムに貼られています。
「何かのおまじないかな」
発見場所を地図に書いていったら、それを線で結ぶと書かれていた図形と同じになることがわかりました。やはり何かのおまじないのようでした。誰が何の目的で。ぞぞ〜。


「ねこをいじめないでください」。明らかに子供の字です。紙もノートをちぎったもの。そこにはかわいい猫の絵と一緒に、「いまかいぬしになってくれる人をさがしています。もうちょっとまってください」というようなことが書かれていました。
「うちの学校の子にちがいないね」
「応援しよう」
帰りがけに神社に寄って、みんなでさっきの「探しています」のポスターの犬のことと、この猫のことをお祈りしました。


貼り紙探検の他、家々の玄関がそれぞれどの方向に向いているのか、なんていうことも調べました。図書館で住宅地図をコピーして、マチを歩きながら一軒一軒、方位磁石で玄関の向きを調べて、それを地図に矢印で書き込んでいきます。南向きや東向きが多いだろうと思いましたが、実際に調べてみると必ずしもそうでないことがわかりました。道路との面し方によって色々あるんですね。


歩道の敷石やマンホールなどの拓本も取って集めました。拓本は対象物をきれいに清掃してから取らなければならないので、竹箒で砂を払ったり、細かい所はブラシで擦ったりして、変なマチの掃除やさん。通る人の迷惑にならないよう、ちゃんと見張りも立てました。
「歩行者接近」
「ラジャ!」
「夏休みの宿題中です、ご迷惑をおかけしまーす」
「おかけしまーす」
近くでやっていた道路工事のおじさんたちが、がんばれと声をかけてくれました。


こういうのがいったい何の勉強になるのかなんて、そんなことはどうでもいいんです。こんなわけのわからないことに熱中できるのは夏休みならでは。そして、何を学んだのかは謎でしたが、とにかくマチが好きになりました。


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