「夢の詰まった工作机」by id:Fuel


私は子供のころから工作が大好きでした。工作だけでなく、そのための道具を揃えるのも大好きでした。お菓子の缶を工具箱にして、その中に色々な道具をしまっていきました。それは子供だった私にとっての宝の箱でした。


子供ですから高価な工具は持てません。あるのはハサミやカッターといった、工具というより文房具というべき道具が中心でした。でも、ピンセットがあれば便利と聞けば竹を削り出して手作り。もちろん粘土ベラなども作りました。ヤスリは親が使っていた爪ヤスリ。子供の工作なら、そんな有り合わせの物でも十分な威力を発揮してくれました。


中学進学を目前に控えたころ、机を新調してもらいました。子供の勉強机から、大人のような机にグレードアップでした。古い机は捨てるというので、それはもったいないと、工作専用机にすることにしました。古い机とはいえ大事に使ってきた物ですから、傷を付けたりするのは嫌です。乏しい小遣いを持ってホームセンターに行き、大きな合板を買いました。一人では運べないので、友だちに手伝ってもらってイエまで運びました。サイズを合わせてノコギリで切って机の上に乗せると、これで傷が付いても平気な工作専用机が完成しました。部屋は狭くなりましたが、夢のスペースは格段に広がりました。


引き出しの中には、だんだん本当に工具と呼べる道具が増えていきました。やがて大人になり、どんどん本格的な工具が増えていき、今ではとても引き出しの中には納まりきれなくなっていますが、それでも机は健在です。今も室内で出来る小さな工作は、その机に向かって行います。机の高さはずいぶん高く改造されました。天板の隅には万力なども取り付けられ、勉強机だったころの面影は薄れています。でも、そこが夢の詰まった宝箱であることに変わりはありません。


私は、一日の作業を終えた後は、必ずその机でコーヒーを一杯飲むことにしています。そうすることで机の上が片付くからです。作業途中の物はそのまま出しっぱなしにしますが、それでも作業の区切り区切りできちんと整頓。これを怠ると精密な作業には不向きな場所となってしまうからです。机でコーヒーを楽しむ所まで入れて作業スケジュールを考える。これが私の工作ポリシーです。


この作業後の一杯のコーヒーが、とてもすてきな時間なんです。作りかけの物を眺めながら香り高いコーヒーを楽しんでいると、それが次の作業手順を考えたりするとてもいい時間になりますし、なにより夢が大きく膨らみます。完成後の状態を想像しながらゆったりとした時間を過ごすことで物づくりのビジョンが明確になり、より完成度の高い作品へと近付いていくんです。


趣味ではなく仕事で根を詰めている時は、この工作机が軽食スペースにもなります。疲れを取るには気持ちの切り替えが大切です。大好きな工作机に移動しての小休止が、とてもいい安らぎの時間を与えてくれます。


時々そこは読書机になることもあります。精密作業用の照明を備えたこの机は、読書にも最適な明かりを提供してくれるからです。そういえば子供のころもこの机で色々な本を読んだなぁ。そんな思い出を積み重ねてきたこの机が大好き。そこで過ごす時間が大のお気に入りです。


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