「夏祭り、くじ運絶好調一家」by id:C2H5OH


中学生の夏。出かけたついでに、少し離れたマチの夏祭りに立ち寄りました。するとそこで両親にバッタリ。何となく一緒にお祭りを歩くことになりました。中学生にもなって親と一緒なんてちょっと恥ずかしい気もしましたが、たまにはそういうのも悪くありません。


まずはじめはやはり神社にお参りです。柄杓の水で手を清め、本殿の前に進み出て、ガランガラン。父に合わせて家族揃って柏手を打ちました。社務所でおみくじをやっていましたので、父が代表で引いてみることに。結果は大吉。善行をもって福が舞い込むとのこと。善行ねぇ、少しゴミでも拾ったらいいことあるかなと、境内に散乱していたゴミを拾って所定のごみ箱へ。


さぁこれで福が来たに違いないと、運試しにくじ引きで最高5個まで当たるリンゴ飴に挑戦してみることにしました。もちろんくじを引くのは、おみくじを引いた父です。一発で家族三人分のリンゴ飴をゲット。1等賞ではなく家族で満ち足りるだけの福が来るのねと母。あぁ、そういう福が一番だと父。欲のない、いい両親です。


続いて何かくじ引きはないかと探すと、当たれば小さなカップが大きなカップになるという唐揚げのお店を発見。これは一人一人全員がルーレットを回しました。結果は全員大カップ。おかしいなぁ、こんなに連続して当たられたら商売あがったりだよとお店の人。それを聞きつけて続々お客さんが集まってきました。おじさんも商売上手です。


よくあるエアガンなどが当たるくじは、あれは絶対ろくなのが当たらないし、当たってもそんなので遊ぶ歳ではないからと敬遠。でもしばらく子供達がくじを引いているのを見ていると、後ろから母が大きな縫いぐるみを抱えてやってきました。「何それ」と聞くと「向こうでくじ引きやってたから引いたら当たっちゃった」とのこと。はいと私に渡されて、要らないよお人形なんてというと、何言ってるの、あげるわけないでしょう、持ってもらうだけよとのこと。これって私にとって福だったのでしょうか。この縫いぐるみは、今も大事に飾られています。


たこ焼きを買って道端に腰掛けて食べながら、色んな物が当たっちゃったね、ここで福を使い尽くすともったいないから、またゴミ拾いでもして福を貯め込もうかと父。大きな縫いぐるみは母に任せて、父と道路のゴミを拾って歩きました。これは、やっているとなかなか楽しく、お祭りのスタッフになった気分になります。道行く人の中にもそう思ってくれる人がいるようで、何人かからご苦労様と声を掛けて頂きました。露店の出ている道を一巡して戻ると、母が待ちくたびれたと口を尖らせていました。


お詫びに母が好きそうなベビーカステラを買って露店をもう一巡。こうして親子のお祭り巡りは終わりました。でもこの話にはさらに後日談があるのです。そんな夏の日のこともすっかり忘れかけた頃、夕食の後、母が一枚の宝くじをテーブルの上に出しました。何これと聞くと、お祭りの日、父と私がゴミ拾いをしていた時に買ってみたとのこと。くじは本当にたったの一枚。ジャンボではない普通の宝くじなので100円です。なのに、当選発表が載っている新聞を広げて見てみると…。なんと下4桁的中!!1万円が当たってしまいました。


「すごい、また当たった、でもこれも1等賞じゃないんだ」と私。「いいのよ、うちはこれで満ち足りてるんだから」と母。「身の丈に合った福が頂けるのが一番の幸せだな」と父。それからもずっと我が家は、与えられすぎはしないけれど、ささやかに満ち足りている幸せに恵まれています。


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