「世界の郷土料理を作ってみる会(仮称)」by id:TomCat


まず、今回の大地震で被災された皆様に、心からのお見舞いを申し上げます。今はただ一刻も早く事態が落ち着いてくれること、被災された皆様、行方の分からない方々のご無事を祈ることのみです。


では、気を取り直して本題に移らせて頂きましょう。


世界には、それは様々な料理があります。そして食にまつわる文化や習慣も様々です。そこで、日本にいながら食を通じた世界の旅。作って、食べて、楽しんで、世界に対する視野を広げようというのがこの集いです。もちろんタイトルにある会の名前は、これを書くにあたって便宜的に付けたもの。実際は「今度は○○の料理やろうぜ」「おー」ってな感じで集まります。


切っ掛けはイラク戦争でした。連日のように報じられるニュースを見ても、それでもまだ、遥か遠い別世界の出来事のように感じている私達。いや、違う、これは私達と同じ“人間”に起こっている惨事なんだ。そう考えられなければ、世界に平和なんてやってこない。そんな友人同士の会話が、食を通じて世界を身近に感じていこうというアプローチを思いつかせました。


そして作ってみたのが、こちらでご紹介した「マグルゥバ」。アラブ流の炊き込みご飯です。
http://q.hatena.ne.jp/1271652851/260928/#i260928
レシピを調べている間に、色々なことを知りました。たとえば、この料理は広くアラブの様々な国々で作られていること。もちろん国や民族、地方などによって、材料や作り方は違ってきます。そこで、イラクの代表的なマグルゥバのレシピは、と調べていくと、さらに同じイラクの中でも、民族の違いなどによる様々なマグルゥバに出会うのでした。


世界のほとんどの国は複数の民族で構成されているし、逆に一つの民族も複数の国に広がって住んでいることが多い。人々は昔から、国も民族も越えた大きな文化圏の中で生きてきた。日本にいると、この当たり前のことをしばしば忘れがちになりますが、料理の分布、そして差違を目の当たりにすることによって、こうしたことがちょっと実感出来ました。


こんな語らいを重ねながら色々調べてレシピを組み立て、それを実際に作ってみる。さらに現地のやり方で盛り付け、現地のやり方で食べてみる。今まで知らなかった国のことが、おぼろげながらも見えてきた感じでした。「これは勉強になった」「楽しかった」「うまかった」「またやろう」ということになって、不定期ですが、今も時々やっています。


しかし、日本流にアレンジして作るエスニック風料理と違って、現地の食文化や伝統に則ってつくってみようということになると、色々難しい問題に直面します。日本では手に入らない食材を何で置き換えるかというのも難問ですが、肉ひとつでも、たとえば前述の「マグルゥバ」などの場合、アラブの人達の多くは宗教的理由で脂身を食べませんから、それを理解して部位を選んだり下ごしらえをしていかないと、現地の味にならなかったりするのです。


また、インドの料理を例にあげれば、 たとえばジャイナ教徒の多い地域の料理にはタマネギなどが使えません。根を取ってしまうとその植物が死んでしまう、また土を掘り起こすとその中に生きているたくさんの小さな生き物も傷つけてしまう、だから農作物も地上に生える分だけを頂くのだと、そういう考え方があるらしいのです。また、インドには五葷を避けるという別の理由でタマネギを食べない人達もいます。


かといって、肉食を戒める宗教の人も、東インドあたりだと魚は構わないと受けとめている人が多いようで、もう調べれば調べるほど奥が深いんですね。というわけで、食材選びひとつを取っても、調べ始めると次々出てくる文化のトリビア。それを楽しみつつ、とりあえず作れる目途が立ったものを作ってみるわけですから、まだまだ謎が解けていない料理が一杯控えています。


世界の郷土料理を作ってみることで、世界の人々の暮らしの一端を垣間見ていく。それを通じて得られるものを、料理と一緒に味わっていく集い。これからも、折に触れて続けて行けたらと思っています。


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