「野生の、本当の山ウドを探す、味わう」by id:momokuri3


ウドはウコギ科タラノキ属。タラノメを取るタラノキと親戚です。なるほど、香りよくおいしいわけですね。向こうは木、こっちは草ですが、どちらも似たような花を咲かせます。


ウドといえば、地下室で育てる白ウドが一般的だろうと思います。白ウドを出荷前に日に当てて緑化させた物も出回っていますが、元々のウドは山に生える普通の草でした。普通に地面から生えて地上で大きくなり、夏ごろにはそれこそウドの大木に成長し、やがて花を咲かせます。山のウドが言葉をしゃべれたら、きっと「人間に食べてもらうことなんて考えたこともないよ」と言うでしょう。それを人間が採ってきて食用にしたのが、お店に出回っているウドの元ですね。


この、人間と会ったこともないような野生のウドがうまいんです。ウド独特の風味をアクととらえる人には栽培物の方がお勧めですが、あの風味がたまらないという人には、香り高い野生のウドが最高です。


採ってきた山ウドは、まずタワシで洗います。付着している泥を取るとともに、茎表面の細かな毛を擦り取ってしまうわけです。葉は、下の方に向かってむしり取れば簡単に取れます。


茎は先端の細い部分を切り落として皮をむき、煮付け用なら半割、酢味噌和えやサラダにするなら短冊切りにして酢水にさらします。軽いアク抜きでいいので、野生の風味はたっぷり残ります。色よく仕上げたいなら、酢水に片栗粉を加えたものにさらします。こうすると片栗粉が色を悪くする成分を吸着して、真っ白な仕上がりになります。


茎の生食は、まず定番の酢味噌和え。マヨネーズやドレッシングで食べても爽やかです。煮付けにするなら、出し汁に酒、砂糖、味醂、塩で色のない煮汁を作り、それで煮含めていきます。私は火が通ったらあまり煮すぎない状態で火を止め、冷める過程で味を含ませるようにしています。このあと、ウドを取り出した煮汁を再沸騰させ、ニンジン、厚揚げなど好みの素材を煮付けて、ウドと同じ器に盛り合わせます。


切り落とした先端部分やむしり取った葉は天ぷらに。これもおいしいです。塩か、出し汁に醤油を合わせた甘味のない天つゆが合うと思います。


皮はきんぴらです。細長く切り、ゴマ油で炒めて酒と醤油で炒りつけたら、私の場合は粉山椒を振り入れます。もちろん七味でもいいですね。筋張った皮も、炒めるととても柔らかに変身します。なお、茎の皮をむく時にもったいながって薄くむくと、茎にはスジが残ってしまいますし、きんぴらも貧弱になってしまいますので、生食ときんぴらはセットと考えて、皮は贅沢に厚くむくようにしていきましょう。


このように素敵な山ウドですが、野生の山ウド採りはなかなか大変です。生えている所は大概、山の斜面だからです。鎌を持って滑りやすい湿った土の斜面を登るのは危険な作業で、低い斜面でも滑落した拍子に鎌で大怪我をすることがありますから、誰にでもお勧めできるものではありません。救急車もすぐには来ない、場所によっては携帯も通じない山での怪我は、思わぬ重大事故に発展する恐さがあります。


しかも山ウドが豊富な地域では、豊富だからこそ地元の特産品として大切にされている場合が多いですから、人目がないのをいいことに勝手に山に入っても、ろくなことにはなりません。


そこで皆さんには、本当の野生の山ウドを売っている場所を探して買いに行く「小さな旅」をお勧めしたいと思います。山村周辺に足を伸ばして自然観察やハイキング。一日楽しんだら帰りに山ウドを買って帰る。これでたっぷりと自然に触れつつ、地元の環境を壊さずに、おいしい春の香りが楽しめますね。


栽培物でない本当の野生の山ウドは、根元から緑化しています。しかも形(大きさ)が揃っていないことが多いので、見ればすぐわかります。栽培物も盛り土などをしない自然に近い育て方なら根元から緑化していますが、だいたい大きさを揃えて収穫していきますから、やたら小さい物からちょっと固そうな大きな物までが混在していれば、だいたい山から刈ってきたと考えて間違いないと思います。


野草、山菜というと、それを採りに行くことばかりが取り上げられがちだと思いますが、人が分け入ることによる自然破壊や乱獲を防ぐためにも、採取は地元の皆さんにお任せする形式の楽しみ方が、もっとクローズアップされていいと思います。


栽培物でない野草山菜は、ネットでは情報が流れないような小さな山村周辺の野菜市などが主な入手先になりますから、情報集めは大変です。しかし、自分の手で行う山菜採りだって足で歩いて探すのですから、「買える」情報だって同じこと。ここはと思う山あいの町をたずねて、人と触れ合いながら野草山菜を探す「小さな旅」も楽しいですよ!


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