「やってみよう、春彼岸のお中日には卵が立つ?」by id:YuzuPON


コロンブスの卵の話みたいに、殻を潰して立てるのではありません。無加工の丸いままの卵を春分の日には立てることが出来る。そんな話が、なんと教育機関専用のジェネリックトップレベルドメインを持った正規のミネソタ大学のサイト内に書かれています。
http://www1.umn.edu/news/features/2004/UR_10666_REGION1.html


まぁ、注意深く読まなくても、タイトルを見るだけで「The vernal equinox: fact and fiction」(春分:事実とフィクション)ですから、あーネタ話なんだなとわかりますが、春分点という何か特別な力が働きそうな位置を太陽が通過するその時、卵のような不安定な物体にも、昼と夜との釣り合いが暗示するような特別なバランスが与えられる。そんな話にはちょっと夢があります。


中国には昔から立春に卵が立つという話があり、地方によっては実際に卵を立てて立春を祝う(あるいは何かを占う?)そうですが、これがなぜアメリカに渡って春分の日に変わったのかというと、それは東洋と西洋における、春の始まりの日のとらえ方の違いによるものと言われているようです。


東洋では二十四節気の最初である立春を春の始まりと考えますが、西洋ではこれから昼が長くなっていく春分を春の起点と考えます。だから立春を意図して「春の最初の日に卵が立つ」と言っても、それを聞いた西洋人は「春分の日に立つのか」と受けとめるわけですね。長い伝統文化の中で暮らしに根付いた暦を中心に季節をとらえていく東洋と、太陽の動きで季節をとらえていく西洋。文系と理系の違いみたいで面白い話です。


もっとも広い中国のこと。春の特別な日というイメージだけが共通する春分に卵を立てる所もあって不思議はありません。少なくともこちらの新聞社のサイト(福建省)には、はっきりと「春分」と明記しながら「立蛋」(卵立て)の風景が報じられています(2005年3月21日付)。
http://www.66163.com/Fujian_w/news/mnrb/gb/content/2005-03/21/content_64660.htm


さらには台湾に行くと卵が立つのは端午の節句だとか夏至の日だという話もあるようで、本当は一体いつなのか、わけがわからなくなってきます。が、結論を申し上げると、実は「いつでも立つ」のです。


ぜひ皆さんも実際にやってみてください。平らなテーブルの上で、注意深く卵のバランスを取りながら、転がらずに安定する状態を探します。いけるかなと思ったら、そーっと手を離してみてください。うまくいけばこれだけで卵が立ちます。理由は、ミクロで見ると、卵の表面はけっして球面のような1点しか接地しない形状ではないから。卵の殻にはごく微少なでこぼこがたくさん存在しますから、その中の出っ張り3点がうまく接地すれば、十分に立たせられるだけの安定が得られるんです。


これは暦とも太陽の動きとも、ましてや昼と夜との時間とも無関係な現象ですから、ほんとはいつでも出来ます。でも、「春分の卵」の逸話をさも文化的あるいは科学的に価値あることのように言いながらやってみると、ちょっと気の利いたジョークになって面白いと思うんです。もちろん最後はちゃんと種明かししてくださいね。


ちなみにマジックでよく使う卵立てのタネは塩。目立たないように塩をテーブルの上に撒いておき、その上で卵を立てていきます。これはある意味コロンブスの卵。卵の方ではなくテーブルに細工をしてもよいという逆転の発想ですね。この場合も盛り塩になるほど撒く必要はなく、小さな塩の結晶3個が卵を支えてくれればそれでOK。それでも塩の結晶は殻の表面の微少な凹凸よりはずっと大きいですから、うまくやれば何も無いより簡単に立てることが出来るようです。何度か練習してコツを掴んで、お墓参りで会う子供たちにやって見せても面白いかもしれません。


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