「模造紙に架空地下都市を描く!!」by id:Fuel


押し入れの中から、くるくると巻かれた大きな紙が出てきました。模造紙です。こんな大きな紙、学校でしか見たことがありません。母にもらっていいかとたずねると、快くOKをもらいました。数日後、イエに遊びに来てくれた二人の友だちと一緒に、この大きな紙に絵を書いて遊ぶことにしました。


「何書こうか」「これだけ大きいんだからマチじゅうの絵地図が書けるぞ」。そこから発展して、まず実際のマチの地図をえがき、それに重ねて、この町の地下に架空の地下都市の地図を空想しながら書いていこうということになりました。対象とする地域は、私たちの小学校の校区全体と決定。この大風呂敷が後で大変な苦労をすることにつながりますが、だからこそ思い出に残る「イエ遊び」になったともいえるでしょう。


まず取りかかったのは、実際のマチの地図を模造紙の上に書いていくことでしたが、これがやってみると何とも難しいんです。自分のマチなんですから知り尽くしているはずなのに、いざ地図に書こうとすると、あの道はどこにつながっているんだっけと大騒ぎ。記憶だけではとても地図が書けません。たしか自治会が作ってくれた町内の地図があるはずと探して、私のイエの周りの地図は見つかったのですが、それは広い校区の一部にしか過ぎませんでした。


結局初日は私たちの町内の地図だけを模造紙に下書きして終了。残りの地域の地図は、クラスの友だちに探してもらうことにしました。でも地図が集まるまで待てないので、校区を自転車で回って直接取材。「あの倉庫、地下室が作れるな」「よし、そこが地上への出入り口だ」などと、想像たくましく足元の下の架空地下都市の様子を思い描きながらあちこちを回りました。


やっと現実のマチの地図が模造紙の上に完成。思わぬ社会科の勉強をしてしまったようです。みんなずいぶんこのマチに詳しくなりました。ここからが本番、地下都市の構想です。


「まず学校の真下に、本物の学校とそっくり同じ物を作ろうぜ」「いいね、建物も校庭も本物と全く一緒」「でも全教室遊び放題、階段抜かし放題、廊下駆け放題」「ひゃっほぅ」。なんという構想。悪い子供たちです(笑)。


地上の各自のイエから、同じく地上の学校や駅までを結ぶ地下ハイウエイも通します。ハイウエイと言っても小学生の構想なので、走るのは自転車。「坂道にならないように平らに作ろうな」「地下道路なら雨が降っても平気だからいいよな」「地上の公園にもつなげようぜ」「どこから出入りする?」「防災倉庫あるじゃん、あそこに地下に通じる階段があるんだよ」「よし、決まり」。


「サッカーと野球のスタジアムが欲しいな」「巨大スクリーンにはゲーム機もつなげて対戦出来る」「ゲームもできるスタジアムか」。
「放送局作ろうよ、地下なら電波は地上に漏れないでしょ」「え、そうなの?」「なら地上のテレビと同じ電波でも混信しないね」。
「俺ここに商店街作る、全部俺の店、俺の経営」「なら俺はこっちに食堂街作る、ラーメン屋からハンバーガー屋まで何でもある」「あ、それなら俺、ここにお祭り通りを作るぞ、一年中お祭りの屋台が並んでて、いつでも遊びに行けるんだ」。
「釣りとかキャンプが出来る場所も欲しいな、大きな池作っていいか?」「ならそこは大きな公園にして、ローラースケートとか凧揚げとか、地上じゃやりにくい遊びが何でもできる場所にしよう」「バーベキュー広場もな」。
「本物の図書館の真下にマンガ図書館作ろうよ、日本中で売られる雑誌とコミックスが全部揃ってる」「テレビのアニメも全部録画してある」「すげ〜〜」。


どんどんワガママな夢が広がっていきます。住宅地の土地はその多くが宅地で占められますが、私たちの地下都市が想定する住人はせいぜい小学校の生徒くらいの数ですから、様々な施設が作り放題です。交通も自転車ハイウエイの他、ジェットコースター、チンチン電車などが地下都市を縦横に走り、行きたい場所によって絶叫しながら乗ったり、ゆっくりのんびり乗ったりして変化が楽しめるように考えました。


地下都市作り構想は一回では終わらず、何回も集まって計画をバージョンアップ。大幅な変更のあった個所には紙を貼り付けて、その上に新しい地図を書いていきました。ただの空想を紙に書いていっただけでしたが、これは本当に楽しい遊びでした。今、住んでいるマチがこんなに好きなのも、子供のころのこうした遊びがあったからかもしれません。


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