★★★(三ツ星)

「卓上炭コンロで、あったかスローライフ鍋」by id:TomCat


炭火には、独特の暖かさがありますね。この炭火を食卓に活かして、素敵なひとときを楽しんでみませんか。

炭火の素晴らしさの第一は、まずその周りに漂う独特の暖かさです。薪で焚いたお風呂のお湯は柔らかいなんて言いますが、それとよく似たほんわか感。エアコンともストーブとも違う、本当に独特の暖かさが炭火の特徴です。これはもう、言葉では言い表せません。

また、炭火は食材の味わいを最高に引き出します。熾った備長炭の発する赤外線の放射強度を測定したグラフを見たことがありますが、それは波長 1.5μmあたりから急激に立ち上がり、3μmをピークに、そこからは波長の長い方に向かって緩やかな下り坂となっていくグラフでした。このうち波長およそ4μmから長い方が、いわゆる「遠赤外線」の領域です。炭火は多量の遠赤外線を発するので、素材の中までじっくり火が通っていく。この通説を科学的に裏付けてくれるようなグラフでした。炭火は焼き肉や田楽などの焙り物を格段に美味しくしてくれますが、炭火でやる鍋もウマイですよ〜。全ての素材が柔らかく仕上がり、味の染みも抜群です。

若干蛇足になりますが、かつて一世を風靡した料理アニメ「ミスター味っ子」でも、二度ほど鍋料理が取り上げられています。最初の鍋回で登場した「ミスター鍋っ子」こと中江兵太は、七輪に乗せた土鍋で鍋料理研究に打ち込んでいました。また、島巡り磯鍋競争の回では、アクシデントに見舞われ調理時間がなくなってしまった主人公・味吉陽一が、焼いた石の発する遠赤外線を用いる手法で、短時間のうちに絶妙な味の鍋料理を仕上げています。これらはあくまでフィクションですが、それでも遠赤外線っていいな〜、って感じが伝わってきませんか?

さらにもうひとつ。これはもうイエはてなで何度も取り上げられてお馴染みの話ですが、炭は素晴らしいバイオマス燃料であるということ。伝統燃料でありながら、CO2排出抑制の切り札となる最先端の燃料でもあるんです。炭素を燃焼させればどんな物でもCO2を出しますが、問題はその炭素の出どころ。森の樹木がせっせと固定してくれる炭素なら、マチで燃やしても、大気中の総量は釣り合いが取れています。これが化石燃料バイオマス燃料との決定的な違いですよね。この地球環境に対する優しさも、炭の温かさの一つです。

さて、炭火を室内で使う方法としては、囲炉裏を作る、火鉢を使うなどの方法が考えられますが、囲炉裏は大がかりになりますし、火鉢は強い火力を得るには向きません。そこで登場するのが卓上炭火コンロです。「卓上 炭」「卓上 炭 コンロ」などのキーワードで検索すると、結構たくさんの卓上炭火コンロが見つかります。

陶製の鉢の上に穴あきの中子を重ねて使う物や、小型の飛騨コンロなど様々なタイプがありますが、私が持っているのは、いわゆる七輪と同じ構造をした物。土鍋を乗せるには、安定性の点からも、このタイプが最も適していると思います。しかし問題なのは背の高さ。卓上IHコンロやカセットコンロはせいぜい5〜10cm程度ですが、七輪型の卓上炭火コンロはおよそ20cm近くになりますから、これだとちょっと、上に乗せた鍋をつつくのがやりにくくなってしまうんです。

そこで私は一工夫。中心に穴のある、ロの字型の変わり座卓を作ってしまいました。使った材料は、よくある規格サイズの板(600mm×300mm)。これを8枚用意して、まず4枚をこんな形に並べます。

ボンドを塗ったらその上に反対向きに組み合わせた4枚の板を乗せて押しをしておくと、

こんな素敵なロの字型の変わり天板が完成です。中心の◎がコンロ。30cm角の穴の中に、直径20cm前後の七輪型卓上コンロがジャストフィットです。全体の寸法は900mm×900mm。つまり、およそ三尺四方。普通のコタツなどとほぼ同サイズですね。

あとはこれに座卓用の折り畳み脚をネジ止めして完成です。市販の板を切らずに使う、ノコギリ要らずの簡単工作。板の端を45度に切って組み合わせればもっとかっこよく仕上がりますが、こんな簡単な作り方でも見栄えはなかなかです。仕上げは着色ニスを塗っておきました。

なお、七輪の高さは適当な台を作って、卓の盤上より5cmくらい七輪の縁が飛び出す高さに調節します。盤面より七輪が沈んでいると、板が焙られて熱を持つ可能性がありますので要注意です。

こんな大げさな物作れないよと言う方は、一人用のお膳を人数分用意して、床に置いた卓上七輪を囲む、なんていうのもいいですね。昔はきっと、囲炉裏の周りに箱膳などを並べ、みんなで火を囲みながら食事をしたことでしょう。そんなシーンの再現です。

いずれの場合も、コンロの下に熱が籠もると床を変色させるおそれがありますから、脚付き卓上コンロといえども、必ず何らかの台を敷いて使うようにしてください。私の場合は、板の上に断熱用として歩道に敷き詰められているようなタイルを乗せ、更にその上に縁のあるステンレストレーを重ねて固定した物を使っています。縁のあるトレーを使えば、灰が空気穴からこぼれ出ても安心ですね。

いかがですか。こんな準備をして初めて楽しめる室内炭火。実際にはさらに火熾し器や火箸(あるいはトング)、火消し壷などの用意も必要です。炭火は一酸化炭素も発生しますから、換気にも要注意。こんな手間がかかると、鍋一つするにも、鍋奉行と並んでもう一人、「炭火奉行」も必要になってきそうですね。IHコンロやカセットコンロならテーブルの上に置くだけなのに、なぜこんな面倒なことを。そう思われる人も少なくないでしょう。いえ、ほとんどの人がそうだと思います。

でも、だからこそ、鍋一つがスペシャルなイベントになる。そう思いませんか? セッティングにも火熾しにも手間暇をかける。ポンと器具を置いてツマミをひねれば済むところに、わざと昔ながらの道具を持ってくる。これがスローライフのカタチの一つ。便利さと引き換えに手放してしまったものが何であったのかを思い出す、ココロもカラダも芯から温まるひとときが楽しめます。


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★★★ ミシュランコメント

「炭」に火を灯す、その自然のあたたかさを解明しつつ、冬のお部屋でのユニークな楽しみ方をここまで考えてくださるとは! 「卓上炭火コンロ」でカンタンあったかな囲炉裏タイムとは、また新しいアイデアです! DIYインテリアからより気軽なアイデアまで教えてくださって、もちろんそこには「お鍋」と「集い」。日本のスローライフの真骨頂ともいえるプランではありませんか? 手と暇をかけてゆっくり過ごすというマインドも、ココロのあたたかさなんだな……と実感しました。まさに「ココロもカラダも芯から温まるひととき」の豊かなご提案メッセージ、★★★に決定です!