「祖母お手製の綿入り半纏」by id:offkey


今、私は綿入り半纏を着てキーボードを叩いています。
朱色の地に黄色の絣がついた生地で裏地も朱色。襟は黒。
この半纏は学生時代の私と妹へ祖母が手作りしてくれたものです。
祖母とは同居していなかったので、お盆やお正月に会うくらいのものだったのですが、いつも行くたびに祖母は元気よく笑っておしゃべりが大好きで、当時まだ独身だった叔母たちや母親ととりとめのない雑談をしていたのをよく覚えています。
私は隅っこでその話を聞くともなしに聞いていました。
そして帰りはいつも祖父が途中まで送ってくれて、お土産に地元の名物菓子を持たせてくれるのです。
祖母は体を動かすのが大変だったのでいつも家の中での見送りでした。
そんな祖母がきっと夜なべをしてくれたのでしょう、目の覚めるような鮮やかな朱色と黄色の絣の綿入り半纏を小包で送ってきてくれたときにはかわいらしい色合いがいっぺんに気に入りました。
そうはいっても当時私はそれほど寒がりではなく、家も冬は暖房を思いっきり効かせるので実は着る機会がそれほどありませんでした。たまに凄く寒いときに着ていた位で、そのうちもったいなくて箪笥の中に大事にしまっておくこととなったのです。


さて、時は流れ、祖母も永眠し私も綿入り半纏を貰ってから30年近く経ちました。
若い時期を通り過ぎてみるとあれほど薄着でも大丈夫だったのが、すっかり寒がりとなってしまいました。
カーディガンを着たりしてはみてもどこか寒い。
そんなときにふと昔貰った半纏のことを思い出してしまってある箪笥から出してみました。
あまり着ていなかったこともあって、色は当時のまま綺麗です。なにより朱色がこの寒さから守ってくれるような温かさをかもし出しており、早速着てみると極太セーターやカーディガンのような重さがなくて軽いのに暖かい。
今は亡き祖母の太陽のような明るさを思い出しながら、普段着ることにしました。
その様子を、妹が見て
「あっ、この半纏まだ持ってたんだ。随分綺麗だね。私はボロボロになってしまったのでもうないよ」
と懐かしそうに言うではありませんか。
そういえば、妹は夜更かしさんで、受験勉強の時とかこれをよく着ていたなあということも思い出しました。


年月とともに移り変わる衣類でこの半纏がいつの間にか古株一番となってました。
祖母の思い出がいつまでも残るように、大事に着ていきたいなと思ってます。


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