メビウスの輪で遊ぼう」by id:YuzuPON


メビウスの輪、別名メビウスの帯などとも呼ばれますが、帯の端と端を180度ねじって貼り付けて輪にした物のことです。ちょっと作ってみましょう。材料は、裏表がはっきりわかる物なら何でもいいですね。ここではチラシの紙を使いました。チョキチョキチョキ、紙を細長く切って、180度ねじって貼り付けて…、できました。



どうですか?平面の紙だった時には裏表がありましたが、こうして180度ねじられた輪になると、この立体(正確には2次元多様体)には裏表がなくなります。表だったところをつつーとたどっていくと、いつのまにか裏だったところに出る。こういう表と裏の区別をつけることができない性質のことを、数学的に「単側性」あるいは「向き付け不可能性」などと呼びます。


ちょっと頭のよい子なら、ここでこう言うでしょう。
「そんなの当たり前だよ、だって裏と表を貼り合わせたんだから」
でも、この大昔の子供もふざけて作っていたかもしれないこのひねりを入れた輪から、

「(帯を)いくつかの三角形に分割して各三角形に向きをつけたとき、全体が同調するようにはできない」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%83%93%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%81%AE%E5%B8%AF

という、なんだかわけがわからないと思いますが、そういう数学上の大発見となる性質が見つかったのでした。ウィキペディアには他にも難解な説明や数式が並んでいますが、とにかくそういう大発見につながった不思議な曲面を持つ物体、それがメビウスの輪なんですね。


では、このメビウスの輪で遊びましょう。まず、メビウスの輪を半分に輪切りにしてみます。



チョキチョキチョキチョキ。表から切っていくと、いつの間にかハサミが裏側に入って切りにくくなっていくのがわかります。ハサミが「向き付け不可能な種数1・境界成分数1の2次元多様体」(ウィキペディアより引用)の世界に入っていったのです。



はい、切れました。じゃーん。輪切りにしたはずなのに、二つの輪にならず、4回(720度)ひねりの大きな輪になりました!


同じようなメビウスの輪を作り直し、今度は幅1/3にカットしてみましょう。



チョキチョキチョキチョキ。ハサミの進み方に注目してください。一周したのにまだ切り終わりませんよ。今いったい、どこを切っているのでしょう。


二周目の終わりが近付きました。あ!切り始めの部分が見えてきました。チョキン。二周して、切り終わりが切り始めと重なりました。さぁ、1/3にスライスしたメビウスの輪は、どんな形になったでしょうか。



じゃーん、おわかりいただけますか?4回(720度)ひねりの大きな輪と、1回(180度)ひねりのメビウスの輪がつながっています。


たくさん輪を作って、色んな切り方を試してみてください。1回ひねりの輪を1/4の幅に切ろうとしたらどうなるでしょう。2回ひねりの輪を半分の幅に切ろうとしたら?3回ひねりの輪でも実験してみてください。3回ひねりの場合は切りにくいので、大きな輪を作ってやってみてくださいね。ほかにも、ひねる回数、切る幅、いろいろな組み合わせを試してみてください。そしてそこから導き出される「なぜそうなるのか」という疑問。この「はてな?」が芽生えたら、それはもう立派な未来の数学者の誕生です。


小さなお子さんには、難しい話は無しにして、手品としてやって見せてあげてもいいですね。
・まず、ひねらず普通に輪にした紙を幅半分に切って見せます。はい、普通に2つの輪になりました。
・次はひねりを入れて輪にした紙を同じように切っていきます。ああっ、2つにならずに大きな輪になりました。ふしぎー!
・では今度は1/3の幅に切ってみるよ…
こんなふうにマジックショーのようにやって見せてから、お子さんにも同じことをやってもらいましょう。ハサミの練習にもなって、上手に切れたら未来の工芸家の誕生にもつながるかもしれません。


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