「昔話を聞く、語る」by id:C2H5OH


昔話というのは、みな口伝えによって伝承されてきたものです。一部著名なお話は今昔物語集宇治拾遺物語御伽草子などによっても伝えられてきていますが、各地に伝わる昔話の数々は、そのほとんどが、文字によらない口伝えのみで伝えられてきたものと考えられます。
昔話には、日本中でほぼ同じ話が語り継がれているものもありますが(昔々あるところに…から始まる時代も場所も特定できない話がこの典型)、私は特に、ある特定の場所で起こったとされるお話(地域に伝わる伝説のような物)や、昔々の地域の人達の世間話が長い時代に渡って面白く語り継がれていった物など、住んでいるマチに密着した物語に注目してみたいと思うのです。
こうしたお話は、昔は炉端でおじいちゃんおばあちゃんから聞かされた物だと思いますが、今はなかなかそういうわけにいきませんから、まず図書館を活用しましょう。公立図書館には必ずといっていいほど、地域の歴史や伝承文化に関する文献を並べたコーナーがありますから、それを利用するのです。
郷土資料館などがある地域では、そういう場所も昔話発掘のいい穴場になりますね。
そしてネットの利用です。「地域名 昔話」などのキーワードで検索すると、けっこう色々なページがヒットすると思います。それらをソースにして、お父さんお母さんオリジナルの口承文学を創作してください。
多少、話が変わってしまっても構いません。小さな子供のためのお話なら短いストーリーにまとめてしまってもいいでしょうし、子供が泣いてしまうような悲しい結末なら、ラストシーンを変えてしまったって構いません。
口伝というのは、こんなふうに語り部による様々な創作が許されるのです。語る人によって挿入されるエピソードが違ったり、結末が違っていたりしても良いのです。それでも変わらない普遍的な部分だけが後世に語り継がれていく。それが伝承文学という物ですから、お父さんお母さんの感性で自由に大らかに解釈して、子供に語って聞かせてあげてください。
これはいわば住んでいるマチを好きになるためのワークショップ。語るお父さんお母さんも、それを聞く子供も、宅地開発されたマチの姿とは全く違う昔々の地域の姿に思いを馳せて、まだ山にキツネがいたりした頃からここに住んでいたかのような気分を共有してみてください。
そして機会があったら、そういうお話に出てきた史跡などを、お散歩がてら訪れてみましょう。このへんが昔居たといわれる長者様の屋敷跡。あのあたりがキツネの居た森。この神社にはあのお話に出てきたお姫様が祭られていると言われている…等々、子供の年齢に応じた地域の歴史散歩にも発展していけるワークショップとなることでしょう。
そうした経験が子供の成長と共に大きく育って、大人になった時に「お前のおじいちゃんから聞いた話なんだけどね」、なんて言いながらその子供にも語り継いでいってくれたら、さらに楽しいと思いませんか。そんな現代に生きるお父さんお母さんからスタートしていく伝承というのがあってもいいと思います。そこから新しい形の郷土愛が芽生えていったら、子供の成長と共に、マチ作りの大きな力にもなっていくことでしょう。


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