「お酒にまつわる言葉あれこれ」by id:Oregano


お酒にまつわる名言のひとつに「一杯目は健康のため、二杯目は喜び、三杯目は心地よさ、四杯目は愚かさのため」というのがあります。誰が最初に言ったのかは知りませんが、うまいことを言ったものですね。たしかに、体質的に飲めない人や、飲むことを禁じられている人を除いて、酔わない程度の少量のアルコールは健康の助けになるようです。それがちょっと進んでほろ酔いになれば楽しくなり、だいぶ回ってくれば気持ちよくなってきて、それを過ぎると後は…。


よく「酒の上」という言葉も出てきます。「愚かさのため」の杯が過ぎたあたりから理性が麻痺して危なくなってまいります。
しかし、ここでちょっと考えてみてください。もし理性が後天的に身につけていくものであるならば、酒の上でのしくじりの姿こそがその人の本性です。逆にもし理性が生まれ持っての天からの授かりものであるとするならば、それを損なう酒は悪魔の水。酒好きとしては、自分のみっともない姿も認めたくないですし、お酒を悪者にしたくもありません。ここは悩みどころですよ。さてさて、皆様はどちらの立場を支持されるでしょうか。
しかしどちらにしても酒の「上」での失敗は、禁酒令を「下」される結果になりやすいものでございます。「酒の上」より奥方様や世間の目の方がずっと「上」なのがこの世の中。ゆめゆめ気を付けたいものですね、ご同輩。


酒盗人は色にあらわれ伽羅盗人は香にあらわれる」なんてことも申します。これも実にうまいことを言ったものですが、なぜか人は飲んでいるのにバレないと思いがち。この最たるものが酒気帯び運転、酒酔い運転でしょう。
しかし「酒は酒屋、餅は餅屋」とも申します。物事には何でも専門分野というものがあり、専門家に任せるのが最も確実という意味ですが、飲酒運転を取り締まる警官もその道のプロ。息の臭いだけでなく、挙動や言葉、眼の動きまで細かく見ていますから、隠し通せるはずがございません。もちろんこればかりは例の言い訳も利きませんよ。
「こらっ、一発免許取り消しだ」
「酒の上のことなんでどうかご勘弁を」
「そうか、それなら仕方がない」
なんて話は聞いたことがございませんね。
ちなみに酒気帯び、酒酔いの状態では、自動車やバイクだけでなく、自転車にも、馬や牛に乗ることも禁止です。「飲んだら乗るな、乗るなら飲むな」はけだし名言です。


さて、昔から酒飲みは「酒無くて何の己が桜かな」などと申しますが、昔の人は「酒はほろ酔い、花は半開き」などとも言いました。満開の花はあとは散るだけ、半分咲いたくらいが風情があってよい。お酒も同じで泥酔すればそれで楽しみは終わり、ほろ酔いくらいが一番楽しくてよい、という意味です。


「お酒飲む人花ならつぼみ、今日もさけさけ明日もさけ」なんて都々逸もありますが、同じ都々逸には「察しておくれよ花ならつぼみ、咲かぬところに味がある」なんてーのもございます。そういえば「咲いた花なら散らねばならぬ、恨むまいぞえ小夜嵐」なんてのもございましたですね。なにごとも中庸が肝腎でございますが、過度の飲酒は肝も腎も痛めますゆえ、散らぬ程度にほどよくお酒を楽しんでまいりましょう。お後がよろしいようで。


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