イエ・ルポ 2

「庭の木たち」by id:YuzuPON


近所で引っ越しがあった後、家が取り壊されました。家屋の解体作業が終わり、敷地の周りに張り巡らされていたシートが取り除かれると、そこは瓦礫の山。廃材を積み出すばかりになっていました。庭木はどうしたんだろうと覗いてみると、無惨に抜かれ、切られたものが、廃材と一緒に積まれていました。あまりの扱いのひどさにショックを受けました。
役所に、うちの方には緑のリサイクルのような制度はないのかと問い合わせてみました。緑のリサイクルと呼ばれている制度には二つの意味があります。ひとつは、剪定枝や落ち葉など、樹木から発生するゴミで堆肥や腐葉土などを作り、緑化資源とする制度。もうひとつが、工事や引っ越しなどで伐採される運命の樹木を自治体に寄託して、庭木が欲しい人に譲り渡してもらったり、公園などに移植してもらう制度のことです。問い合わせたのはもちろん後者の制度です。
役所の返事は、ある、とのことでした。しかしせっかくの制度も知ってか知らずか利用しない人が多く、無駄に切られてしまう樹木も多く残念だとの答えです。さらに、受け入れられる樹木の大きさには限度があるので、本当に残したい大きさの木が現行制度では残せないという問題点も、率直に教えてもらいました。
わが家にも、狭いながら庭があります。そしてそこには、ちょっとした木陰が出来るくらいの木が植わっています。そんな大木ではありませんが、もうこの大きさになったら、自治体では受け入れてくれないでしょう。としたらこの木はわが家の家族で守るしかありません。
私はまだ独身ですから、父母と同居しています。しかしおそらくそう遠くないうちに独立することになるだろうと考えていました。私が家を出た後、もしも父の転勤などで引っ越し話が持ち上がったら、この家はどうなるのでしょう。この庭木はどうなってしまうのでしょう。わが家の場合、築年数から考えて、売却すればほぼ確実に家屋は取り壊して建て替えです。そうなれば、この木たちはあの引っ越した家の庭木のように…。
最近私は、庭木を受け継いでいくための親との同居というのも有りかなと考え始めるようになりました。昔は、ちょっとした旧家の庭先には、立派な大木があったものでした。それは代々親から子へと受け継がれてきたから大木に育ったものに違いありません。私が未来に残していきたいのは、この庭の木々たちです。