「世界が平和かどうかを見つめ続ける〈Peace Watchtower〉の製作」
by id:TomCat


「世界終末時計」というのがあります。戦争や自然破壊などによってもたらされる人類滅亡の危機を、0時まであと何分という形で予測し、象徴的に表示する時計です。最初の時計は原爆投下から2年後の1947年に米国の科学誌Bulletin of the Atomic Scientists(原子力科学者会報)
http://www.thebulletin.org/
の表紙に掲載されました。以来様々な国際情勢を反映させながら、時計の針の更新が続けられています。


日本には「地球平和監視時計」というのもあります。広島平和記念資料館内に設置されているもので、最上部にアナログ時計、その下に2つのデジタル表示の日数カウンターが配置されています。
http://www.pcf.city.hiroshima.jp/virtual/VirtualMuseum_j/tour/ireihi/tour_55.html


この日数カウンタは、上段が広島に原爆が投下された日からの経過日数、下段が最後に核実験が行われた日からの日数を示します。上段は人類が滅亡していない限り、一日たてば確実に一つずつカウントアップされていきますが、下段は、核廃絶の願いを無視して行われる愚かな実験が明らかになるたびにリセットされることになります。


本日現在、広島に原爆が投下された日からは、23391日が経過しています。
しかし最後に核実験が行われた日からは、わずかに 2520日が経過したのみです。
つまり人類は、原爆投下という人類最大の過ちから2万日以上を経ても、まだ同じ過ちを繰り返そうとしていると言うことです。


平和を考えるこの夏。私はこの二つの時計を組み合わせた「Peace Watchtower」を作ってみることにしました。Watchtowerとは火の見櫓(ひのみやぐら)のこと。時計のWatchとかけて、ここから世界が平和に向かっているのか、それとも後退しているのかを監視し続けます。


ボディになったのは、ちょうどこんなコンクリート製の束石(つかいし)です。地面から柱を立てる時の土台に使われる建築部材ですね。
http://userdisk.webry.biglobe.ne.jp/003/947/76/1/DSC_28282.jpg
ホームセンターで「上手に使えばお買い得、欠け・割れ品1個100円」と書かれて売られていた物を買ってきました。角が欠け落ちてけっこうボロボロですが、このボロさが主張の一つなんです。だって、最後の核実験からの経過日数を示す物が、ピカピカの新品では困るじゃないですか。


「核実験なんて何世紀前の出来事じゃろうなあ、ほれ、もう誰も手を触れなくなった地球平和監視時計は、深い森の中で苔むしておるわ、ふぉっふぉっふぉっ」


となってくれなければ困ります。ですから、敢えてボロボロの部材をボディとすることにしたわけです。 
最上段の「世界終末時計」部分は、普通の時計と見間違えられることの無いように、Bulletin of the Atomic Scientists誌に掲載される物と同じ、45分〜正時までをクローズアップした文字盤としました。
http://ma3104.air-nifty.com/photos/touch_the_earth/photo_7.jpg


円盤部分は真鍮板。表面を良く磨いて脱脂した後、ペイントで世界地図を書き、側面と裏面もペイントで塗りつぶしてマスキング、塩化第二鉄水溶液に浸けて金属露出部分を溶解させるというエッチングの技法で、上記写真のような浮き彫り模様を作りました。


文字盤のドットと短針は、円形、および細長い台形に切り出した銅板を用いました。文字盤とお揃いの真鍮板でもよかったのですが、たまたまちょうどいい円形の銅板があったので、それを用いたわけです。文字盤との接合は、文字盤にドリルで穴を開けて、裏からハンダ付けしていきました。

ドットと短針の色付けについては、黒のペイントを筆塗りしました。マスキングしてスプレーするよりは、筆塗りの方がずっと楽です。


時計の長針も銅板製です。同じく黒のペイントで仕上げてあります。これをビスと飾りナットで文字盤に取り付ければ、「世界終末時計」部分は出来上がり。現在の終末時計の針は5分前を指していますから、その位置で長針を固定しました。


日数カウンター部分は、最初はPICマイコンでやろうと思っていました。PIC(Peripheral Interface Controller:周辺機器接続制御用IC)とは、メインCPUを本店にたとえれば、支点機能のような制御を担わせるために開発された物ですが、単体でも小規模なコンピュータとして動作します。日数カウンターなどを作るのには最適な物なのですが・・・・。


有明の某行事の最中、後で秋葉に買い出しに行こうと思うと言ったら、みんなから「そりゃよくない」と反対されてしまいました。
* 「世界終末時計」は手動なのに、日数カウンターだけ自動というのは整合性が悪い
* 地球温暖化による終末を防ぐためには極力エネルギーの消費を抑えるべきで、電気は使わない方がいい。
* 毎日手動で数字を更新する所に、強い願いの力が生まれる。
言われてみればその通りです。


そこで、銅板に前述のエッチングの技法で文字入れをし、銅アングルを上記と同じく裏側からハンダ付けする方法で取り付けて数字板を差し込むレールにすることで、日数カウンタに代えることとしました。数字は毎日、交番にある交通事故数の表示と同じように、手動で数字札を差し替えて更新していきます。


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┃┌──────────┐┃
┃│広島原爆投下から  │┃
┃│〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓│┃
┃│ |2|3|3|9|1|日|│┃
┃│〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓│┃
┃│最後の核実験から  │┃
┃│〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓│┃
┃│  |2|5|2|0|日|│┃
┃│〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓│┃
┃│   が経過しました│┃
┃│          │┃
┃└──────────┘┃
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最後に、コンクリートの束石に穴を開けてプラグ(コンクリートに埋め込むネジ)を差し込み、この銅板を飾りボルトで取り付けて完成しました。


本当は実物をお目に掛けたいのですが、これは近日中に門柱を加工してその上に取り付ける予定ですので、写真をお見せしてしまうと、わが家の場所がモロバレになってしまいます。それはやばいw


でも、この書き込みを行った後なら、「皆さんも、世界が本当に平和に近付いているのか、それとも遠ざかっているのかを監視するこのミニ時計塔を、ぜひご一緒に作ってください」と呼びかけることで、およそ30万人くらいの皆さんが後に続いてくださると思いますので(いや、冗談抜きに、ネットってそのくらいの力がありますよね)、日本中にこの「Peace Watchtower」が林立した時には、私の作品もきっとお目にかけたいと思っています。


最後に、本物の「Peace Watchtower」を企画、建立し、広島市に寄贈した「NPO法人 広島からの『地球平和監視』を考える会」をご紹介しておきます。


この会は、原爆投下の前年または前々年に広島で生まれた高校の同級生の皆さんが、1999年8月6日に「生誕20000日」記念の同期会を開いたことに始まります。反核・平和というとすぐに焦臭い政治活動と関連づけようとする人がいますが、この会は広島で生まれ育った人達の同期会が元ですから、既存の政治運動とは全く関係を持たない特徴があります。


詳しいことは会のオフィシャルサイトをご覧いただきたいと思いますが、
http://www5a.biglobe.ne.jp/~pwc/
時計塔建立の役割を果たした現在は、出身地などにこだわらない幅広い活動として、東京にも事務局を置いて、世界恒久平和実現に向けた意志を発信し続けています。


戦争なんて昔のこと、今さらそんなカビくさい話を語り継ぐだの受け継ぐなどちゃんちゃらおかしい、といったことを触れ回る人達がいます。しかし、世界は60 有余年を経過しても、こと戦争に関しては、いまだにその本質を変えるに至っていないんです。前述のように、広島に原爆が落とされてから23391日も経過したというのに、まだ世界は核開発・核軍備にこだわり続けています。そうした世界の真相を具体的に教えてくれるこの時計塔を、皆さんもぜひ作ってみてください。卓上用の小さな物を、ペーパークラフトで作ってみてもいいと思います。


http://www5a.biglobe.ne.jp/~pwc/download.htm
なお、パソコンのデスクトップに置いて使える、ソフトウエア版の「PeaceWatch」も配布されています。私達は世界恒久平和を目指すと世界に宣言した国の主権者です。一人一人が平和作りの担い手です。個人の立場で何ができるかなんて分かりませんが、とにかく、核のない、戦争のない、軍隊の必要ない世界を目指して、何か一つでも具体的な行動を起こしてみようではありませんか。「Peace Watch」は、そのための一つになると思います。


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