「『無人島に生きる十六人』」by id:Lady_Cinnamon


 名作ジュール・ベンヌの『十五少年漂流記』は大半の人が、その名を聞いたことや子供の頃に読んだことがあるかと思います。しかしこれはあくまでSF小説です。今回紹介したいのは、これに勝るとも劣らない、日本の実録漂流記。椎名誠さんの口から「痛快! 十六中年漂流記」と言わしめた、『無人島に生きる十六人』です。
 

無人島に生きる十六人 (新潮文庫)

無人島に生きる十六人 (新潮文庫)

 『無人島に生きる十六人』は昭和20年代、40年代にも出版されている知られざる大ロングセラー本なんです。何故かというと、これは東京高等商船学校の連絡船「龍眠丸」が事故にあったのが、明治31年の話だから。

Amazonより
大嵐で船が難破し、僕らは無人島に流れついた!明治31年、帆船・龍睡丸は太平洋上で座礁し、脱出した16人を乗せたボートは、珊瑚礁のちっちゃな島に漂着した。飲み水や火の確保、見張り櫓や海亀牧場作り、海鳥やあざらしとの交流など、助け合い、日々工夫する日本男児たちは、再び祖国の土を踏むことができるのだろうか?


 なお、著者である須川さん自身は体験者ではありません。実習生だった頃に、遭難当時の船長だった中川倉吉先生から、龍睡丸の漂流体験記を話してくださったことが忘れられず、懇願して本にまとめたのが『無人島に生きる十六人』。


 そして、明治の体験記を平成に復刊するきっかけを作ってくれたのが、探検大好き作家の椎名誠さんでした(なお、この本がベンヌのようにフィクションに色付けされているのではないか?という疑問にも、巻末で資料を提示してくれています)。


 文庫本なのに中にカラーの漂流島の図が掲載されていたり、文の途中でも挿絵が沢山ある所も読みやすいのですが、須川さんのキレの良い文章、漂流と言うサバイバル状況下なのに、時に涙あり笑いありの読みやすさのおかげで、一気に読み切ることができます。


 そして何度でも読みたくなる、感動エピソードがあるんですよ。読まれたことのある人は、大半が、船員たちとアザラシのことで1度は涙すると思います。ネタバレになってしまうので、ここでは書きませんが・・・この冒険実話に感動するのは間違いなしです。


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