★★(二ツ星)

「雨を空に返すイエ・マチを考えてみる」by id:tough


自然の大地は、降った雨水を地面に浸透させるとともに、それを蒸散という形で空に返してきました。しかし今の都市は降った雨を貯めておくことができないので、なかなかそれを空に返すことができません。別のツリーに雨を地下に浸透させることの重要性を詳しく説明してくれているものがありますが、私はそこに、土に染み込ませて保持した水分を空に返していく仕組みを組み合わせていきたいと思うのです。
水分を空に返していく仕組みは非常に簡単です。植物を植えればよいのです。植物は湿度の少ない時にたくさんの水分を蒸散させる性質がありますから、植物に任せておけば雨を空に返すサイクルを担ってくれると同時に、とても快適な地域が作れます。植物を「土と空をつなぐインターフェイス」として活用していくイエ・マチに努力していくことで、より効果的に雨の恵みを生かしていく都市が作れると思います。
植物がいかに水分を空気中に放出しているかについて、私は夏の道を自転車で走っている時に実感しました。そこは父の実家のある町です。照りつける強い日差しの下を借りた自転車で走っていましたが、突然空気がヒヤッとしてきたのを感じたのです。照りつける太陽は相変わらずですが、豊かな緑の林が道の片側にあり、緩やかな斜面を伝って、林の涼しい空気が降りてきていたのでした。これは感動ものの涼しさでした。
林はただ木陰があるから涼しいのではありません。光合成に伴ってたくさんの水分を蒸散させているから、その気化熱によって冷やされて、空気がヒンヤリしているのです。
植物の水分の蒸散と大気浄化の効果について、なんと中学生のグループが行った研究があります。
http://www.geocities.co.jp/NatureLand/2876/zyoukasayou.htm
http://ksueda.hp.infoseek.co.jp/zyosan2.htm
これによると、日当たりのよい所に一代だけ栄えるタイプの植物は、成長が早いだけにたくさんの水分を蒸散させる。これに対して何代もに渡って安定した雑木林を形成する植物は、量は少ないが長い期間にわたって安定した蒸散が確保される、といった特徴があるようです。
早急な効果を得たい場合に適した植物と、長期間安定した効果が得られる植物とをうまく組み合わせていくと、効果的な「雨を空に返すイエ・マチ」が計画できそうですね。
また木本だけでなく草本も「土と空をつなぐインターフェイス」として有効です。水分の蒸散は光合成に伴って行われますから、日当たりの良い屋上は雨水を空に返す一等地と考えられます。草花や野菜類なら屋上でも比較的簡単に栽培できますから、雨水を栽培に活用し、光合成で丸々太った野菜などを楽しみつつ、水の循環にも貢献していくことができますね。
「雨を空に返すイエ・マチ」は、先の「街ひとつ丸ごと設計プランコンテスト」でピックアップ賞になった「緑が街を覆う、グランドカバーの街」と全く同じ設計のマチということになると思います。そこに、雨水を貯めて植物のために利用したり、土に染み込ませたりしていく努力を加えることで、
http://homepage2.nifty.com/arck/book/book3_img2.html
こういう自然の水の循環の中に健全に存在できるイエ、マチが作れるのではないかと思います。


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★★ ミシュランコメント

これまでに、植物を植えて育てることのさまざまな豊かさと効用は多く語られてきましたが、「雨を空に返す」という視点で考えられたグリーンプランのご紹介ははじめてではないでしょうか? 「植物の水分の蒸散と大気浄化」についての中学生グループの素晴らしい研究レポートにも瞠目しました! 「土と空をつなぐ」という考え方を実際的に示して下さったと同時に、以前にここでの語らいと結びつけてさらに素敵なマチ・プランにまで高められたメッセージに★★!! このプランが多くのイエ、マチで実現されていったら、どんなに美しく豊かな光景、暮らしが生まれるだろうと胸が躍りました!