イエコト・ミシュラン

「菜も七、薬味も七、締めの雑炊も七の、わが家の七草鍋」by id:SweetJelly


せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ、これぞ七種。今年の七草は過ぎてしまいましたが、正月七日を祝って食べる七草鍋のご紹介です。
七草というとお粥が有名ですが、なぜお粥なのかというと、昔は「七“草”粥」ではなく「七“種”粥」だったから。延喜式によると、後世の七草粥に相当する望粥は、米、粟、きび、ひえ、みの、胡麻、小豆の七種の穀物を炊いてお粥にしたものでした。
一方、「草」の方の七草は、古典を紐解くと、枕草子に「七日の若菜」の名で登場します。これは「子の日の遊び」という新年最初の子の日(十二支のねずみの日)に野原で若菜を摘んで楽しんだ習慣のことです。
ここに鳥追い行事が結びつき、お粥を炊きつつその横で、地面を叩く鳥追い行事そのままにまな板をトントン叩きながら「七草なずな 唐土の鳥が 渡らぬ先に…」などと歌いつつ七草を刻む習慣が生まれました。こうしてみじん切りになった七草をお粥に乗せて食べるようになったのが、現代に伝わる七草粥と考えられます。
わが家の七日の粥は、草ではなく種の方。正月七日の朝は、七種類の穀物を炊いたお粥を戴きます(ただし「みの」は手に入らないので世界の食とつながる気持ちで小麦に置き換えています)。そして草の方は夜を待って「七日の若菜」のお鍋。鳥追いの「七草なずな 唐土の鳥が トントントン」はわが家ではやりません。
わが家の七草鍋の基本形は鶏だしの水炊きです。まず鶏ガラでおだしをとります。ぐらぐら煮立てるとおだしが濁りますので、沸騰ぎりぎりの火加減で澄んだおだしを取ります。おだしがとれたら漉して土鍋に注ぎ、昆布を入れて一煮立ち。あとは鶏肉を入れ、すずなすすしろは根っこもおいしいので短冊切りにして加え、火が通ってきたら七草を加えてできあがりです。若菜は煮すぎないほうがおいしいと思います。
七草鍋には薬味も七種。基本のポン酢醤油に、
もみじおろし
・柚子皮
・柚子胡椒
・あさつき
胡麻
・山椒
・生姜
の薬味が並びます。
さらに締めの雑炊には、朝の七種の穀物のお粥をちょっと残しておいて加えます。これで若菜も薬味も雑炊も全てが七。おめでたさ三乗の七草鍋でお腹いっぱい幸せもいっぱい。わが家ではこんなふうに、朝のお粥から夜のお鍋まで、一日中七草(種)を楽しみつつお正月を締めくくります。