「動物愛護週間にお薦めの本」by id:TomCat


平岩米吉という人がいます。明治生まれの動物行動学の草分けであると共に、雑誌「動物文学」を創刊した人でもありました。シートンの「動物記」などを日本で最初に紹介し、その翻訳を掲載したのもこの雑誌です。
http://www.tsukiji-shokan.co.jp/mokuroku/ISBN4-8067-6802-2.html
「動物文学」創刊の翌年「動物文学会」が創立され、文学をもって動物に対する理解を広げ、習性を正しく理解して接していくことを啓蒙する活動は、日本の初期の動物愛護運動の重要な柱の一つとなっていきました。


さて、そんな本の果たす動物愛護啓蒙の意義を踏まえつつ、灯火親しむ読書の秋にお勧めの動物本をいくつかご紹介してみたいと思います。

猫たちを救う犬

猫たちを救う犬

今日もまた猫たちを救う犬

今日もまた猫たちを救う犬

事故で重症を負い失業した著者は、失意のどん底でした。そんな彼が一匹の犬と出会います。その犬は、著者のもとで特別な才能を発揮し始めました。


通常、傷ついた猫は、人目を避けて隠れます。しかしその犬は、それを素早く発見し、助けようとするのです。目の見えない猫、耳の聞こえない猫、後肢が失われた猫、小脳形成不全の猫などなど、様々な障害を負う猫たちを次々と見つけ出し、救助しようとする犬。著者は愛犬に促されるままに、そうした猫たちを助けはじめます。そうした愛犬と飼い主の二人三脚(五脚?)の動物保護活動が、投げ出しかけていた著者の人生にまでも光を与え、救っていくことになります。


というドキュメンタリー。これは実話です。正続二冊。読み応えがあります。動物好きの人だけでなく、ハートウォーミングな書物を求めている人にもお勧めです。

子鹿物語 [DVD]

子鹿物語 [DVD]

こちらは書籍ではなく映画でご紹介してみましょう。書籍では様々な翻訳が出版されていますから、子供の頃に読んだことがある人も多いと思います。その映画化がこれ。舞台は、まだ開拓の鎚音響くアメリカです。兄弟もなく、歳の近い友だちも近くにいなかった少年ジョディが出会った一匹の子鹿。ジョディは子鹿を深く愛しますが・・・・。


これはまだ人々が自然の厳しさと向き合いながら、生きるために必死だった時代のお話です。明るい話ではありませんし、動物の命を尊びなさいと教える話でもありません。しかし、このお話は、幼い頃に誰もが持っていたはずの、動物を愛する心を蘇らせてくれます。


監督は「肉体と悪魔」「アンナ・カレニナ」などの作品でも知られるクラレンス・ブラウン。父親役は「ローマの休日」で王女アンの相手役となった二枚目新聞記者でお馴染みのグレゴリー・ペック。母親役は、後のアメリカ大統領ロナルド・レーガンの最初の妻として知られるジェーン・ワイマン。少年役はジョン・ウェイン主演「リオ・グランデの砦」などに子役で出演していたクロード・ジャーマン・Jr。1946年の作品です。

みかん・絵日記 特別編 第1巻 (白泉社文庫 あ 3-7)

みかん・絵日記 特別編 第1巻 (白泉社文庫 あ 3-7)

次はコミックをいってみましょう。これは漫画ですから当然フィクションですが、もし猫が言葉をしゃべれたらきっとこんなことを考えているに違いないと、本当にそう思えるシーンが満載のストーリーなんです。ただの擬人化を超えた、猫に対する深い眼差しが感じられます。


本作は1987年に「LaLa」誌上に掲載された「叶夢と不思議な猫」という読み切りを連載・シリーズ化したもので、同誌88年6月号〜95年1月号までの長期にわたって連載されました。92年にはアニメ化もされましたので、そちらでご存じの方も多いかもしれません。


ご紹介した特別編は本編終了後に読みきりとして描かれた作品で、コミカルな娯楽性を前面に打ち出した本編とはちょっと違った、深みのある感動作になっています。


虐待にさらされていた子猫「ミズイロ」を助けたのは、まだ吐夢少年と出会う前の「みかん」。この二匹が、「猫にだって心があるんだ!」「猫にだって命があるんだ!」と、小さな体を振り絞って訴えかけてくるようなストーリーが展開されていきます。でも、暗くて辛いお話ではありません。安孫子三和さん独特の穏やかな絵と優しさ溢れるストーリーで、読後感はとても爽やかです。

捨て犬を救う街 (角川文庫)

捨て犬を救う街 (角川文庫)

最後は、ちょっと重たい内容の本をご紹介してみましょう。動物のことを考える時、毎年数十万匹というおびただしい数の「致死処分」を忘れることは出来ません。何の罪もない犬や猫たちが、ただ不要になった、捨てられた、行き場がないといった理由だけで殺されていきます。私達が幸せに微笑んでいる今この時間にも、何万という死を待つだけの動物たちが、自治体によって収容されています。


著者はこの本で、そんな日本の現状と、捨てられた犬や猫の命を何とか殺さずに助けようとするサンフランシスコと対比させながら、不幸な犬猫を一匹でも減らすために私達に何が出来るのかを、渾身のルポルタージュで探っていきます。


今まで知らなかった、いえ、知ろうとしなかった現実が見えてきます。それを知ってしまうのは辛いことかもしれません。しかし、現実から目を背けず、真剣に見つめていくことで、初めて自分に出来ることも見えてきます。


上のサムネをクリックして、さらにAmazonのページを開くボタンを押し、「この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています」の項目にも目を通してください。知っているけれど知りたくない、出来れば目を背けていたい。そんな現実に目を向けさせる本が、これでもかと並んでいます。いつもなら見なかったことにして避けてしまうこうした本も、ぜひ動物愛護週間だからという特別な気持ちで、勇気を出して手に取ってみて欲しいと思います。きっと、あなたの中で、何かが変わります。


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