「秋と言えば新蕎麦です」by id:Fuel



わが家では父が蕎麦打ちに凝っているので、秋の味覚というと、香り高い新蕎麦が欠かせません。
新蕎麦が出回る時期は産地によって異なり、それを追いかけていくと、桜前線ならぬ「新蕎麦前線」があることがわかります。


新蕎麦前線の移り変わり
http://sarashinasoba.ld.infoseek.co.jp/hitorigoto26.htmより引用
九月上旬 ・・北海道浦臼町新得町斜里町ニセコ
九月中旬・・北海道幌加内町、沼田町、旭川市鹿追町、下川町
九月下旬・・青森市・秋田峰浜村皆瀬村
十月上旬・・岩手一戸町、山形高畠町
十月中旬・・青森三沢市山形市、福島磐梯町、茨城金砂郷、新潟妙高村、長野諏訪市
十月下旬・・茨城大子町、栃木葛生町、長野松本市、山梨高根町
十一月上旬・・静岡県、石川県、福井県 
十一月中旬・・熊本波野村、宮崎川南町
十一月下旬・・熊本久木野村、宮崎都城
十二月・・・宮崎新富町、鹿児島薩摩町、有明町、長崎対馬


こうやって全部の産地を追いかけていくと初秋から冬まで新鮮な新蕎麦粉が手に入るわけです。実際には近くの産地の新蕎麦粉か、通販でも買える粉屋さんのある産地の新蕎麦粉しか買えませんが、産地が違うと蕎麦粉の様子が違い、打ち方に違いが出てくるので、それによってかなり味わいの違う蕎麦ができあがります。ですから新蕎麦前線が動いていく時期には、今まで手にしたことのない産地の蕎麦粉を探すのも楽しみの一つになります。
蕎麦打ちは主に父の担当なので、私は手に入った蕎麦粉の産地に伝わる「つゆ」の特徴を調べ、それを再現する実験を行います。蕎麦は「つゆ」の作り方にも各産地独特のものがあります。歴史と伝統につちかわれた蕎麦は、まずその地元に長く伝わるつゆで食べてみるのが一番でしょうから、少しでもそれに近いつゆの再現を試みてみます。そのため、父が新たな産地の蕎麦粉の入手ルートを開拓すると、私はその地方の伝統的な蔵元の醤油の入手ルート開拓に奔走します。こういうこだわりの親子タッグが、新蕎麦の季節の楽しみの一つでもあります。
こうして麺からつゆまで全て手作りの新蕎麦ができあがると、家族で試食会に移ります。蕎麦は香りや喉越しを楽しむ食べ物なので、食べる時には音を立てることが許されます。これは和食のマナーとして正しいことであり、和食の普及によって、国際的にもこのことは認知されつつあります。したがって、特に香りが命の新蕎麦は、空気と一緒に豪快に啜り込み、その空気を鼻孔から抜くことで香りを味わいつつ食べていきます。ズズー、ズズーと落語のような音を立てながら、蕎麦をすすります。こういう賑やかな食卓も、またわが家の秋ならではの風景です。


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