「本好きの土用の行事は本の虫干し(プラス土用餅でティータイム」by id:TomCat


「土用干し」というと、梅干し作りの作業の一貫としてのものが有名ですが、ほかにも衣類に風を通したり、寺社の宝蔵庫の宝物を陰干しすることも、昔からの土用の歳時として伝えられてきました。いわゆる「虫干し」の一環ですね。


日本は森と水に恵まれた国ですが、言い換えればそれは湿度が高いということですから、梅雨明けの晴天が続く頃に行うものを「土用干し」、10月頃に行うものを「秋干し」、11〜12月頃に行うものを「寒干し」と呼び、年間を通じてこうした虫干しを行ってきました。


さて、わが家では夏の土用を書物に感謝する歳事と位置づけ、特に本の虫干しを行います。一般に土用干しは三日三晩と言われますが、書物の場合は晴天が続き湿度が下がると思われる休日を選び、10時〜15時くらいの日の高い時間に限って、基本的に室内で陰干しにします。


窓や扉を二ヶ所以上開けて部屋に風を通し、書棚から本を出してズラリと並べます。といっても全ての本はとても並べ切れませんから、まあ言ってみればこれは儀式ということで、特に貴重な本や年代を経ている本などを中心に並べていきます。


作業が終わったら、ズラリ並んだ本に囲まれながら、土用のスペシャティータイム。お茶をすすりながら「土用餅」をいただきます。これがなかなかの至福の時間。何のことはない、ただのあんころ餅ですが、好きな本に囲まれながらのお茶の時間は最高です。


ちなみに「土用餅」の習慣は、古く公家の間に伝わっていた歳事に由来します。昔は餅粉を練った物を味噌仕立ての汁の中に入れるなどして食したようですが、江戸中期頃から餅を小豆餡で包んだものに変わったと言われています。夏の無病息災を願う食べ物です。おそらく土用と言えば丑の日、丑の方角と言えば守護神は玄武、玄武と言えば黒、ということで、古くから神前への供え物とされてきた餅を、黒っぽい餡で包んだのでしょう。


ま、難しいことは何でもいいんです。とにかく、作業が終わればあんころ餅が待っている、それを励みに体を動かすという、そういうスケジュールがいいんです。本も数が多くなると、力仕事ではないにしてもそれなりに時間が掛かりますから、こんなお楽しみも必要です。


部屋や書物に爽やかな風を通しつつ、まったりとあんころ餅で過ごす夏の一日。とても癒されるひとときでもあります。そこまでするほど本がないという方も、お気に入りの本を数冊選んで土用の風を通し、書物に対する感謝のイベントとしてみてはどうでしょう。きっと、もっと本が好きになるに違いありません。


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