「雨降りお月さん」by id:tough


雨が降ると、私はこの歌を思い出します。私にも好きになった女性がいました。その人が、雨にけぶるキャンパスを見ながら、この歌を一人口ずさんでいたんです。通りがかった私は、後ろでそれを聞いていました。そしたら不思議なことに気付きました。1番と2番のメロディが違うんです!
彼女が私に気付いて振り返りました。私はとっさに、この曲1番と2番のメロディが、みたいなことを口走りました。すると彼女は、そうなのよ、この歌は歌詞のイントネーションに合わせて1番と2番のメロディが別々に作られているの、と教えてくれました。そして私に一緒に歌うよう促して、メロディの違いを詳しく教えてくれました。けっきょく彼女とは友だち以上にはなれませんでしたが、この曲を歌うと、今もそのころの思いがよみがえってくるのです。やはり今のような、夏に近い雨の日のことでした。
以来私はまだ、この歌を正しく最後まで歌える人に会ったことがありません。


 雨降りお月さん


 作詞 野口雨情、作曲 中山晋平大正14年


 雨降りお月さん 雲の蔭
 お嫁にゆくときゃ 誰とゆく
 一人で傘(からかさ) さしてゆく
 傘(からかさ)ないときゃ 誰とゆく
 シャラシャラ シャンシャン 鈴つけた
 お馬にゆられて ぬれてゆく
 いそがにゃお馬よ 夜が明けよう
 手綱の下から チョイと見たりゃ
 お袖でお顔を かくしてる
 お袖はぬれても 乾しゃかわく
 雨降りお月さん 雲の蔭
 お馬にゆられて ぬれてゆく


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