「受験ストレスでお煮染め爆発、家庭内大戦争by id:MINT


私は中学生のころ、進路選択ですごく不安定になっていた時がありました。担任の先生が勧めてくれる進学先と自分が行きたい所とがかけ離れすぎていて、あれこれ考えているうちに、いったい自分は何を求めて受験するのかもわからなくなってしまいました。ストレスが貯まって、私は家の中でまったくしゃべらなくなりました。
家の中でも両親が私の進路についてあれこれ話しかけてきますが、私にはそれが辛く、しまいに夕食時に爆発して、お皿をひっくり返して激怒してしまいました。
もちろんそんなことをすれば親は怒ります。でもうちの親は「こら!」と怒るタイプではなく、こういう時でもいかにも冷静に「物に当たるのは良くない」とかさとすタイプなので、それがさらにしゃくにさわって、私は椅子を蹴ってひっくり返したりして、だんだん歯止めがきかなくなっていきました。
その夜のおかずに、コンニャクのお煮染めがありました。私はコンニャクを掴んで父に投げつけました。父はそれでも冷静に座ったままなので、さらに腹を立てた私は、もう一掴みコンニャクを取って、無関係な弟にも投げつけました。弟のおでこにコンニャクが当たって、お茶碗を持っていた弟の動きが止まりました。
弟がガタンと大きな音をたてて椅子から立ち上がりました。私は一瞬、殴られると思いました。弟も皿に手を突っ込んで、手の平一杯にお煮染めを握りました。ところが弟は私の方を見てにっこり笑って、気持ちはわかった、手伝うよと言って、握ったお煮染めを壁に向かって投げつけました。私はびっくりしました。弟はもう一掴みお皿からお煮染めを取って、反対側の壁にも投げつけました。
それを見た父が、よし、父さんも手伝うぞと言いながら、隣のお皿をぶちまけました。ほら、母さんも一緒にと言いながらお茶碗のご飯を握って天井に向けてばら撒き始めました。
私はあっけにとられて、このPTAが見たら抗議の電話が殺到しそうなどたばたコントのような様子を見ていました。
そして夕食がめちゃくちゃになったところで母がお茶をいれてくれて、これは熱いからひっくり返しちゃだめよと言ってお掃除を始めました。父も弟も一緒に掃除を始めました。私がひっくり返ったお皿を戻そうとすると弟が、姉ちゃんはお茶を飲んでればいいから、これからは気のすむまで暴れていいから、俺も付き合うからと言ってくれました。父も、その通りだな、人間誰でも暴れたい時はある、そういう時は一緒に暴れようと言ってくれました。
それで一気に心が晴れて、この家から通うならどんな学校でもいいやと思えるようになりました。学校よりもここの家が私に色んなことを教えてくれると思えたんだと思います。その年の暮れに大掃除をしたら、天井の蛍光灯にこびりついたご飯粒を発見しました。あの時のだと思って、すごく懐かしく感じました。ひからびたご飯粒を取って紙に包んで、受験のお守りにしました。おかげで最初に希望していた学校とはちがうところでしたが、いい高校に進学できました。


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