「色々な意味で少し大人に近付いた高一の夏休みの母とのけんか」by id:TinkerBell


私は中学時代、友だちが少なく地味な三年間をすごしていましたので、高校生になったら友だちをいっぱい作って活発にすごしたいと思っていました。
無事高校生になれた最初の年の夏休み。私はクラスの女の子に誘われて、毎日のように遊びに出かけるようになっていました。友だちが増えて、望み通りの楽しい高校生活に、私はもう夢中でした。友だちの家を泊まり歩いたりもしました。私にはそれが小さなころのお泊まり会みたいで、楽しくて楽しくてしかたがなかったんです。
でも、あまりに自由奔放に過ごしすぎました。ついに髪を染めて帰宅した翌日、私は母に呼び止められました。母はやさしく、一日くらい家でゆっくり過ごしましょうと言ってくれましたが、私は、だめよ約束があるからと呼び止める母を振り切って出かけ、そのまま二晩外泊をしてしまいました。もうこの時、母が怒っているということを察していたんだと思います。家に帰りづらくなっていたんです。
三日目に家に帰って、やはり母と大げんかになりました。今思えば母は私を心配して気遣ってくれていただけだったと思います。でも私はそんな母の一言一言に反発してしまいました。
私、中学のころ、すごく寂しかったんだから。友だち少なくてすごく寂しかったんだから。それが今やっと友だちが出来たんだから。私はもう寂しくなりたくないの。みんなに合わせないと友だちなくしちゃうでしょ。髪染めるのだって、泊まり歩くのだって、みんなと仲良くするためのお付き合いなんだから。それがわからないの?
当時の私には、それが私にとっての正しいことでした。自分はぜったい間違ったことを言っていないと思っていました。そのまま家を出て、友だちと会いました。そして、まったくうちのお母さんて頭にきちゃうと愚痴をこぼしたら…。
友だちが、あんたそれまずいよ、あたしらもう親に見放されてるから好き勝手やってるけど、あんたまでそれに合わせて親に見放されたら洒落になんない、あんた友だちと親とどっちが大事なのと、逆に説教されてしまったんです。私は驚きました。
多少付き合いが悪いくらいで無くす友だちならそんなの友だちじゃない。みんなには事情を伝えておくから、あんたはしばらく家にいなさいと言われて、私はもう数日は帰らないと決めていた帰路を、またとぼとぼと帰りました。電車に乗って、駅を降りても、まだ日は高いままでした。こんな早い時間に駅から家に向かって歩いていくのは久し振りでした。足取りが重くて、何度も帰るのをやめようと思いました。
マンションの敷地の入り口が見える所まで行くと、平日だというのに父の姿が見えました。歩道のガードレールに寄りかかって、たばこを吸っていました。え、父はたばこを吸わないはずなのに何か変と思って駆け寄っていくと、父が手を振って呼んでくれました。一緒に家に帰りました。
家に帰ってもしばらくぎくしゃくしていましたが、あとで父からは、母が泣きながら会社に電話してきたこと(私が生まれてからそんなことは初めてだったそうです)、母からは、父はあまりに心配がつのると、やめたはずのたばこを吸ってしまう癖があることを聞きました。
少し背伸びして大人に近付いた16歳の夏。そしていい友だちと両親に恵まれて少し子供の考えから成長できた16歳の夏のできごとでした。


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