★(一ツ星)

「空間使いの知恵〜文机(ふづくえ)」by id:sumike


 日本では昔から限られた空間を工夫して、上手に使ってきました。
その一つが、靴を脱ぐ文化です。
おかげ様で座ったり寝ころがったりとイエの中ではどこでもくつろげます。
こうした巧みな空間使いは、家具にも言えます。


 現在は部屋の洋風化と共にテーブルやデスク&チェアのスタイルが主流となっていますが、昔は卓袱台、そして文机(ふづくえ)が活躍していました。
この文机(ふづくえ)という言葉自体あまり聞かなくなって久しい今日この頃ですが、
文机とはその名の通り読み書きをする際に使う、一人用の木製の脚折れ机です。
座って使うことから、座り机とも呼ばれています。


 もともとは平安時代に僧侶が写経をするために登場し、江戸の頃、寺子屋の普及と共に一般に広がったものだそうです。
物を書く以外に晩酌時の酒卓や裁縫机などにも応用がきくとっても便利な家具です。


 実は実家にはこの文机があり、今でも父が愛用しております。
私も気に入っていて昔はよく読書に作文、習字に裁縫、そして弟相手に連珠やオセロなどをする際に使っていました。


 父が使用している文机は折りたたむと厚さわずか10センチになり、一台では文机ですが、
二台を組み合わせれば大きなテーブルになります。
そのもう一台の文机は双様机。
座り机とキャスターつきの縦長ワゴンの二つの顔を持ち、これまた好きな場所に動かせて文机として使用します。


 学習机とは違い移動も簡単にでき、椅子を使う机に比べて圧迫感がなく、背板がないので足も伸ばせます。
座っていると、床も360度使うことが出来ます。
広い場所をとる習字や裁縫の際にも広々とした床も使えて、合理的。


 使わない時に文机は脚は折りたたんで省スペースに収納することができ、あちこちへ手軽に移動できる
とても便利な家具なのです。


 子どもと一緒に和室で勉強をする時にも重宝しますね。


 複数あっても圧迫感がなく、使い方を限定しない家具なので、その使用の可能性は無限大、デザインもシンプルなので、
和室はもちろん、フローリングの洋室でも使えます。


 そして、今私が気に入って使っているのが、文机とは異なり折りたためませんが同く背板なしのコの字型ローテーブル。
こちらは無印良品でリーズナブルな価格で取り扱われています。


 こちらはちょっとした荷物置きから、棚・ミニテーブル・ラック・簡易ベンチなど、
置き方も使い方も自由自在の便利な家具です。
棚や簡易ベンチとして使用した場合の耐荷重は四十キロと、強度も十分。 文机と同じく、使い道を限定せずに幅広く使える便利なアイテムです。


 洒落た座椅子に座って文机やコの字机でパソコンを使う、これはまさに現代版の文机の使用法といえるでしょう。


 しかしパソコンの普及で、今ではゆっくり手紙を書くような機会が減ってしまっています。
九月は長月とも云われ、夜が少しずつ長くなる月です。


 時にはキーボードの代わりにゆっくりと手間と時間をかけて文をしたためることで、素敵な贈り物となります。
忙しい毎日の中で相手を思い、ゆっくりと文字を綴る、そんな豊かな秋の夜長を過ごしてみるのもいいですね。


参考サイト
(文机の歴史)
http://iroha-japan.net/iroha/B03_life/15_fudukue.html
(文机)
http://www.orientalspace.com/05/0503/000035.html
(無印コの字家具)
http://www.muji.net/store/cmdty/detail/4548718121656
(双様机)
http://www.toyocraft.com/goods/senior/sc60.htm


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ミシュランコメント

限られた空間をいかに活かしながら快適に暮らすか、ということが一番の課題といっていい日本のイエ。その環境のなかで育まれた「座」の空間と折りたたみの座卓や文机などの家具。なかでも「文机」という家具に代表させて、コンパクトなことはもちろん、暮らしのあらゆる用途とともにひろがっていった歴史と、現代のイエに活かされている実例のご紹介が素晴らしい! 「文机」には、日本の空間の知恵と、そこで過ごす時間や文化がこんなに凝縮されているのですね! 私も日頃からお招きなどに脚折れ座卓を愛用、先だっては一人膳にもなるアンティークの折りたたみ式チビチビちゃぶ台を入手して、手許で使うモノを置いて大活躍です。洋の空間でもさっと豊かなくつろぎ空間が生まれる「文机」をあらためて見直す素敵なメッセージに、贈呈です!!