「名もなく貧しく恥ずかしく」by id:MINT


本当のフレーズは「名もなく貧しく美しく」です。松山善三さんの初監督作品の映画のタイトルで、脚本も松山善三さんご自身が手がけられました。戦中戦後と数々の苦難を乗り越えて生きてきた聾唖の夫婦の一生と、そのあまりにはかない生涯の閉じ方にもかかわらず、貧しくとも美しく生きた両親に誇りを持って生きようと決意する息子の、実話を元にした感動的な物語です。


ところが父は、こんな名作のタイトルをオヤジギャグにしてしまいました。
お父さんそれはひどいようと言うと、父曰く、
「これでいいんだ。お父さんには才能も世渡りのテクニックもないから、いつも恥のかきとおしだった。何度も自分の情けなさに泣いたものさ。でも人に劣る経験の貧しさを正面から見つめることで、努力の大切さを知ったんだ。今もお父さんは、他の人なら簡単にできることでも自分にはできなくて、恥ずかしい思いをすることがたくさんある。だから恥ずかしさをかなぐり捨て一心不乱に努力することができる。どんなにみっともなくても、日々成長しようと努力する心は美しいんだ」


うわぁ。ただのオヤジギャグかと思ったら、とても深い意味が隠されていました。


そういう意味の恥ずかしさかー、てっきりミニスカートでお尻が見えちゃうようなことかと思ったと言ったら、それは「品なく、そそっかしく、恥ずかしくだな」と、また即興のオヤジギャグをかましていました。


でも、人より劣る恥ずかしさをバネに、いまさらこんなことをという恥ずかしさをかなぐり捨てて努力することは、本当に大切だと思います。努力が名声や成功につながるとは限りませんし、努力が富につながるとも限りません。でもそんな下心無しに自分を伸ばしていく喜びを知る人生は美しいと思います。


最近父はだんだん頭のてっぺんが薄くなってきて、おまけに先日差し歯が取れてしまって歯医者さんに行っていました。これじゃ毛もなく歯もなくジジむさくだなとしょんぼりしていましたが、中年になっても日々成長を目指すことを忘れない父は、誰より若い心を持っていると思います。そんな父を私は、「名もなく貧しく美しく」の物語で親の生き方に誇りを持って強く生きようとしていく一郎と同じように尊敬しています。


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