「人生は甘いものにせよ 苦いものにせよ 好ましいものとして役立てよう」
by id:momokuri3


色々悩んでいた時期がありました。そんな私を察してか、父の部屋からこんな曲が流れてきたんです。

この暗い時期にもいとしい友よ
僕の言葉を聞いてくれ
だましたり苦しめたり はずかしめたり
見放したりおどしたりなどはしないから


音楽好きの私の耳は、どんなに悩んでいても、音楽に引っ張られます。私はこの初めて聴く歌に耳を傾けました。

そして、この歌の歌詞は3番までありますが、
(歌詞の全体はこちらをご覧ください
http://www.evesta.jp/lyric/artists/a323725/lyrics/l80107.html
いつの間にか、その3番が頭の中でローテーションし始めました。

陽の輝きと嵐とは同じ空の
違った表情にしかすぎない
人生を明るいと思うときも暗いと思うときも
僕はけっして人生をののしりたくはない
人生は甘いものにせよ 苦いものにせよ
好ましいものとして役立てよう


歌の歌詞には、わざと訴えたいメッセージの逆の言葉を盛り込んで、肯定するふりをしながら否定するというのがありますから、素直に歌詞の内容を受けとめたわけではありませんでした。でも、ブルースっぽい、絞り出すような素朴な歌い方に、だんだん引き込まれていきました。


あぁ、その通りかもしれない。明るく希望に満ちている時も、暗く沈んでいる時も、どちらも同じ自分の人生。同じ時間の軸の右・左。道が分かれて迷い込んだ場所じゃない。行き着く先が違うわけでもない。


俺は何を悩んでいるんだ。あぁ、違う。悩むのはいいことだ。そうだ、悩むことを嫌がるな俺。希望に膨らますも重く詰まるのも同じ俺の胸。明るく輝くも暗く伏せるも同じ俺の目。だから俺の頭よ、明るいと思う時も暗いと思う時も、どちらも好ましいものとして受けとめろ。


だんだんそんな気持ちになってきました。よく人は、明けない夜はない、なんて言います。でも深く心が沈んでいる時には、自分自身が夜明けを望まなくなってしまうのですから、そんな励ましも届かないことがあります。
しかし、光り輝く昼間の空も、暗い夜空も同じ空なんだ、なぜ同じ空の一方の姿だけを嫌がる必要があると言われれば、それはインパクトがあります。


心が明るく軽くなったとは言いませんが、何となく気持ちの整理が付きかけて、自分の部屋を出てリビングに行きました。すると父も入ってきて、いい歌だろうと、録音した物を渡してくれました。
「元がアナログ盤だから、さっきもそれで聴いてたんだ。それやるから気に入ったら聴いてくれ」
それだけの言葉でしたが、何時間親身になって話を聞いてもらっても得られないようなものが伝わってくる気がしました。


「人生は甘いものにせよ 苦いものにせよ 好ましいものとして役立てよう」
父の直接の言葉ではありませんが、これが私の心に強く響いた父からのメッセージです。


最近ギターを弾きはじめた私は、時々この歌を、無意識のうちに歌っていることがあります。父がいる場所で口ずさんでしまって赤面したこともありましたが(やはり父の術中にはまったことがバレたみたいで恥ずかしい)、素知らぬ顔で続きを歌っていたら、最後のリフレインの所で父がコーラスを付けてきて、即興のセッションのようになりました。父は元バンド屋ですから、こういうのはうまいんです。
以来、
「人生は甘いものにせよ 苦いものにせよ 好ましいものとして役立てよう」
このフレーズは、親子の口癖ならぬ「歌癖」になりつつあります。


※引用歌詞出典
文中の歌詞(書き込みタイトル部分を含む)は「この暗い時期にも」(作詞・作曲 生田敬太郎)より引用

この暗い時期にも(紙ジャケット仕様)

この暗い時期にも(紙ジャケット仕様)


オリジナル盤は1971年、エレックレコードよりリリース


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