★★★(三ツ星)

「家族の壁」by id:TinkerBell


わが家にある「家族の壁」をご紹介します。
家族それぞれが自由に自分をアピールしたり、家族の絆を深めるためのものを飾っておけたりする壁です。


普通「家族の壁」というと、家族間の隔たりのことを意味します。
わが家にも、そういう時期がありました。
私は引っ込み思案で、外で自分を表現することができない分、その鬱憤が家で出てしまう子供でした。
中学にさしかかるころから、親なんてなにもわかってくれない、もう私に構わないでよ攻撃がはじまりました。
家が暗くなり、だんだん家族全体が険悪になって、父母同士でも言葉を荒げることが起こるようになりました。
そんな時、父の発案で、壁に大きなコルクボードを吊り下げて、何か言いたいことがあったら紙に書いてここに貼ろう、ということになったんです。
文章なら言い争いにならないし、言った言わないの誤解もない、書いている間に考える時間もできてみんな冷静になれる、というわけです。
父も母も私も、それぞれの思いを書いて貼り付けました。
こうしてコミュニケーションが復活していくと、だんだん心が通ってきて、家族の溝が埋まっていきました。
そして以前よりもずっと、家族の絆が深まっていきました。


イエの中に温かい会話が復活すると、壁のコルクボードはもう不要になりましたが、いつのまにかそこに家族のスナップなどが貼られるようになりました。
ある雑誌に母の投稿が採用されてその内容が記事になった時など、「快挙!○○さん(母の名前)雑誌デビュー!」と書いた紙と共に雑誌のコピーが貼られて、
その下に父の字で「↑自画自賛」と書かれた紙が貼られて、大笑いになったこともありました。


そんなことが重なるうち、壁の下にかわいいチェストがやってきて、その上にフォトスタンドが並べられたり、各自が手作りした物などが置かれるようになりました。
そのうちそれでも足りなくなって、上に棚が取り付けられました。
そしてまた父の発案で、そこを「家族の壁」と呼ぶようになりました。


「どこの家にも家族の壁はある。人間なんだからそれは当たり前だ。でもわが家の家族の壁はこれにしよう。こういう家族の壁なら大歓迎だろう」


母も私もその提案に大賛成でした。
それからは、またちょっと家族に壁ができちゃったかなと思った時も、すぐにその「家族の壁」が思い出されて、心に壁ができてしまうことがなくなりました。


皆さんのイエでも、こういう「家族の壁」はいかがでしょう。
昔のイエには床の間がありました。
床の間のある側を上座というように、それがイエの空間の頂点でした。
現代の暮らし空間の中にも、そういう芯となる場所が必要です。
「家族の壁」は頂点というより、イエの中の空間の中心、かな。
そういう場所を作ることで、家という空間がただの共同生活の場から家族の絆を紡ぐ場所に変わり、
家族という存在がただの共同生活者から、この世でただひとつの愛の形でつながる、かけがえのない存在に変わっていくと思います。


壁を一面空けて、そこに家族の交流の場を作る。
ただそれだけで実現できます。
工事も何も要りません。
皆さんのイエにも、心を閉ざす壁ではなく、こんな愛を紡ぐ「家族の壁」をぜひどうぞ。


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★★★ ミシュランコメント

イエの壁テーマで、こんな素敵な家族のエピソードを聞かせて頂けるとは思いも寄りませんでした…。小さなコルクボードから、心と一緒に空間もどんどん大きくなって、暮らしの真ん中にある「家族の壁」にまで成長するストーリーに感動です。家族のニュースも手作り品も写真もメッセージも、常に現在進行形でそこに集まっている。そこは、人の絆も愛も、それぞれの自分らしさや精神も育む、大きくひらかれた壁。ご家族のハートの大きさまで伝わってきます。子供たちにも、小さな頃からイエにこんな壁スペースがあったら、どんなに心がひらかれることだろう…。障壁を意味する壁を、心をひらく「家族の壁」へと展開された、深く豊かな家族の思いに★★★を贈呈します!