「コーヒーカップやスプーン、ケーキ皿など一式」by id:CandyPot


ほかにもお冷やのグラスとか、ちっちゃなミルクピッチャーとか、とにかく喫茶店が開けそうな食器類が山ほどあります。これは父が若いころ毎日のように通っていたという喫茶店が廃業した時にもらってきた物。馴染みのお店の終焉を惜しんで、一種の形見分け的な気持ちで頂いてきたものたちなのだそうです。
だから、こんなにたくさんどこにしまったらいいの?と言いたいけれど言えません。一部を父母と私の普段使い用にしている他は、大切に大切に保管してあります。
今も愛知県や岐阜県などの中部地域では、喫茶店が町の大切な要素の一つになっていると聞きます。私も名古屋に行くことがありますが、市街地はもちろん、人家のまばらな所にまで喫茶店があるのに驚きます。でも東京はチェーンのコーヒーショップやファーストフードのお店に取って代わられて、喫茶店はほとんど絶滅状態のようです。
一度父に連れられて、その喫茶店の跡地に行ってみたことがあります。駅裏の路地を入って行くその場所は、とてもお店に適した立地とは思えない所でした。でも昔はかえってそういう隠れ家的なところが好まれて、いつ行っても満席に近い盛況ぶりだったのだそうです。だからお店に入るとまず知り合いを探して相席いいかいと声をかけるのがこの店での常識。そうでないと座る場所が見つからないくらいだったと、父は懐かしそうに言っていました。コーヒーを飲むことより、友だちとの時間の共有を楽しみに行く場所だったんでしょうね。
父はいつか、そういう店を開きたいなぁと言っています。退職後が年金だけで暮らせる社会なら、誰もお客さんの来ない喫茶店で一人マスターをして過ごすんだ、この家、いつかそんなふうに使っていいかいなどと夢を語る父のために、この食器類はいつまでも大切に保管しておこうと思っています。


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