「屋根神様」by id:C2H5OH


屋根神様。それは屋根の上に作られた祠に祭られた神様です。
http://www.yanegami.com/
屋根の上に縁起を担いだ何かを配置する例はハザマさんの回答例をはじめ全国的に色々と見られるようですが、このように神社なみの本格的な祠を作ってお祭りする例は、全国的にはかなり珍しいと思います。おそらく愛知県や岐阜県などの一部に見られるだけでしょう。
御祭神は、名古屋の場合、火伏せの秋葉神社、厄除けの津島神社、そして明治以降になると戦争の関係で武運長久を祈願する熱田神宮が加わり、この三柱をお祭りしているのが一般的なようですです。
屋根神様はどこの家にも祭られているものではなく、町内の守り神的にある程度の区域に一つずつ祭られていて、各地域の住民が共同で祭祀を受け持っているようです。
小さな祠を作って神様をお祭りする習慣は全国にありますが、なぜ中部地域の限られた一帯でだけ、その場所が屋根の上なのでしょう。土地が確保しにくかったのでしょうか。高い所にお祭りすることで崇敬の念を表したかったのでしょうか。あるいは少しでも天に近付きたかったのでしょうか。屋根神様について研究している人は何人もいるようですが、この習慣の起源については、いまだ確定的なことは解明されていないそうです。
現在の屋根神様の祠は、戦災被害の少なかった場所に多く残っています。名古屋で言えば西区、中村区、中区界隈です。戦勝を願って熱田神宮を勧請したにもかかわらず、戦争によって多くの家が焼かれ、それによって祠が消滅してしまったことは、皮肉というほかありません。
熱田神宮草薙剣(くさなぎのつるぎ)が御神体です。尾張で宮簀媛と結婚をした日本武尊が媛のもとにこの剣を預けたまま病没、遺された剣を祭るために宮簀媛によって建てられたのが熱田神宮のはじまりです。たしかに日本武尊は数々の武勇が伝えられていますが、熱田神宮のそもそもは剣のみたまを鎮める、すなわち平和の祈りから発している神社だろうと思います。太平洋戦争の戦火をくぐり抜けて今日に残る屋根神様が、平和の祈りとともにとこしえにあり続けることを願っています。


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