★★(二ツ星)

「自然物も人工物もオール拾い物で作った電池」by id:Catnip


実用価値は全くありませんが、エネルギーを考える切っ掛けの一つとなって、その経験がライフスタイルを豊かに彩ってくれる“かもしれない”、オール拾い物で作った電池をご紹介してみたいと思います。
まずこちらの図をご覧ください。乾電池の構造はこんなふうになっています。
http://www.tdk.co.jp/techmag/knowledge/200510/img/kl051002.gif
作ってみた電池も、この構造を真似しました。負極(電池のマイナスになる側)にはイオン化傾向が大きく活性度の高い金属が適していますが、そのための最適な金属が道端に転がっています。それはアルミ缶です。缶切りで缶の上部を切り取り、目の細かい紙ヤスリで内側の腐食防止のコーティングを丁寧に除去して用いました。
負極(缶)の内側はセパレーターという物で覆われますが、それには捨てられていた雑誌に綴り込まれていた資料請求用葉書の紙を用いました。丸めた紙を側面内側に差し込み、缶の直径より少し大きめの丸く切った紙を缶底に詰め込んで、金属部分が露出しないようにします。
正極(プラス側になる電極)には炭素棒が必要ですが、これには歩道の植え込みの中に落ちていた鉛筆の芯を使うことにしました。落とされてからかなり期間が経っていたらしく、木の軸がとてももろくなっていましたので、簡単に中の芯が取り出せました。これに電話の配線に使う電線の切れ端から取ったエナメル線くらいの細い銅線を密着して巻き付けて、電気の取り出し口としました。
人工物の拾い物利用は以上で、ここから後は自然物の活用になります。まずマンガン乾電池二酸化マンガンに相当する部分には、枯れ枝を拾って燃やして作った消し炭を使いました。
電解液(電気を通す液体)には色々な物の利用が考えられますが、この電池は夏休みのグループ研究として作った物なので、食塩水を使うことにしました。夏休みと食塩水とのつながり、それは海です。瀬戸内の親戚に泊まりに行った人が、タライに張った海水をムシロにかけて水分を蒸発させるという方法で濃縮し、ムシロに白く浮かび上がった塩分も無駄にせず丁寧に採取して、大変な手間と日数をかけて、天日だけで飽和食塩水を作って持ち帰ってきたのです。彼は電池実験とは別に製塩実験のレポートもまとめて提出し、夏休み自由研究コンテストの個人部門で金賞を取っていました。
話を電池に戻します。枯れ枝を燃やして作った消し炭を細かく砕き、セパレーターで内側を覆った空き缶に詰め、鉛筆の芯の電極を折らないように注意深く差し込んで、缶底をトントンとやって密着させて、飽和食塩水を注ぎます。鉛筆芯と空き缶の間にテスターを接続してみたら、約1Vの電圧が発生していました。拾い物だけで作る電池は大成功でした。二つ直列につなげて発光ダイオードの点灯にも成功しました。
この海水と枯れ枝で作られた電池は、いわば母なる海と、父なる大地の恩恵を電気として取りだしていると言えます。最も人工的な存在と思っていた電気が、実は自然の恩恵だったわけです。このことに気付いた私達は、それまでの認識を大きく転換させられました。また自分達で電気を手作りしてみた経験も、電気の貴重さを認識するに十分でした。
人は火を得たことで文明を手にしたと言われます。そしてその火が電気に変わった時、文明は飛躍的な進歩を遂げました。しかし火も電気も人間が作り出した物ではなく、実は太古の昔から存在する大自然の恩恵だったのだと考えると、そこに地球温暖化を防ぐ鍵があるように思えてなりません。


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★★ ミシュランコメント

海水と枯れ枝で作られた電池…こちらは創意のこもった制作実験レポートとともに、「火も電気も人間が作り出した物ではなく、実は太古の昔から存在する大自然の恩恵だったのだ」という気づきを実感させてくれるメッセージに★★です! なるほど今の私たちの生活を支えてくれている電気も、もとは自然の恩恵、それを運用しているのが人工であって、私たちは感謝とともに自然と一緒に生きていかなければいけない。そんな思いを抱かせてくれる自然工作というものがあったんですね。自然世界の仕組みを実感させてくれるモノづくり、大人も子供ももっと経験出来ればいいなって思いました!