「お姉ちゃん、おいしい」by id:staples54


県外へ就職した弟が勤めてその数年後、体調を崩して入院。
父はすぐさま飛行機に乗って弟を迎えにいき、地元へと連れ帰って自宅療養が始まりました。
久しぶりに対面した弟は、体は痩せこけて顔は青白く精神的にもズタボロになっており
本人が声を出そうとしても出ない状態に。
家族一団となって、○○君を助けよう! 父は家族に呼びかけ、それに私達は必死に答えました。
自殺の危険性がある、といって両親は日中夜間と交代で付き添って
姉も私もそれぞれ仕事と家事を済ませて、実家へと通う日々が続きました。
私は自分を責めていました。弟が仕事を辞めたいと相談されたときに当時は就職難で地元に戻っても就職口はないし最低3年は石にかじりついて頑張りなさい、と言ったのです。
弟はそれから5年間勤めました。こんな姿になってしまったのは自分のせいではないのか。
自分を責めずにはいられませんでした。
朝から夕方まで働いた後、家に戻り洗濯と掃除と夕飯の支度を済ませて実家へ向かう途中に
弟が何か喜ぶものをと 差し入れを持って自宅へ。
食も細くなってあまり食べない、話さない弟。
箸を持てず、スプーンで口元へ運んでも口を開けてくれなかったのに
手に持ってパンを食べてくれた。
それだけで驚いて嬉しくて涙がにじみました。ぱっとみると母も少し泣いているように見えました。
”お姉ちゃん、おいしい。ありがとう”、と片言で繰り返すのです。
その場にいた両親も、私もそれを聞いて大喜び。
”また買ってくるね。”
久しぶりに会話が成立したことを噛みしめていました。
あの時は本当に嬉しかった。
あれから月日は流れて弟はすっかり元気を取り戻しています。
朝の5時からほぼ毎日釣りに出掛けるのが彼の日課ですっかり日焼けして
釣りバカな日記をブログに書いて友達と交流しているみたいです。
そんな姿を、いまとても喜んでいます。


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