「自分には嘘はつかれへんねんで。」by id:atomatom


母親に言われました。小学校低学年のころですね。当時のぼくは、まあ、自分で言うのもなんなんですけど、頭の回転の速いこどもで、ピンチになってもなんとか口先からのでまかせで切り抜けられる、努力なんてしなくてもやっていける、と思っていたようなこどもでした。
妹と2人でおつかいを頼まれたんですけど、その店が遠いので行くのが面倒だったんです。
そこで妹と共謀して、行ったのは行ったけど、品物が売り切れで買えなかった、というような今考えればわかりやすい嘘で切り抜けようとしたのです。
そのとき、母親が「まあ、ええけどな。けど、覚えとくねんで。自分に嘘はつかれへんねんで」と言ったのでした。
言われた瞬間はどうってことないな、むしろ、それ以上、怒られないですんでラッキー、くらいに思っていたんですけど、あとになって言われた文句よりもそのときの母親の悲しそうな顔を思い出すようになりました。
そこからもう30年ほど経ちました。
いまだにちょいちょい嘘をつきながら生きています。
嘘をつくたびに母親のあの悲しそうな顔がなんとなく思い浮かぶんだから、困ったもんですよ、ほんとに。


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