「私、この家に生まれてきて良かったわぁ(おそらく語尾にハート)」by id:Fuel


イエはてなに出会う数ヶ月前のことでした。ですから比較的最近の話です。当時私は毎日のほとんどの時間を、家族とは別々に過ごしていました。仕事帰りに同僚と飲み食いすることが多く、休日もほとんどどこかに遊びに出ていましたし、家にいる時は自室にこもってパソコン三昧。両親と同居なのにここしばらく親の顔を見ていない、なんていうことも珍しくありませんでした。


そんなある日、珍しく私は休日の真っ昼間に、家族とリビングで過ごしていたんです。家族の顔が全て揃っている休日なんて正月以来のできごとです。夏でしたので、父が何か冷たい物を飲みたいと言い出しました。以下再現ドラマでお送りします。


母「今できるのはインスタントのアイスコーヒーくらいねぇ」
私「じゃ何か買ってこようか」
父「もったいない」
私「いいよ、そのくらいおごるから」
父「いやお金じゃなくて、せっかくこうして家族が揃っている所で一人抜けてしまうのがもったいないんだ」
私「そんな、10分もあれば戻るのに。自販機なら3分」
父「それでももったいない」
私「それなら俺がインスタントでないアイスコーヒーを淹れようか」
母「それはすてき」
私、キッチンに行き秘蔵の豆でコーヒーを淹れる。
母、いい香りと喜んでいる。
私、氷が冷蔵庫のなのが残念だと言いながらグラスを三つお盆に乗せてテーブルに運ぶ。
父「お、これはうまいな」
母「ほんとねぇ、こんなアイスコーヒー久し振り」
私「えへんえへん(童心に戻っておだてられた子供のように喜んでいる)」


久し振りに、子供だったころのような家族の時間が流れていきました。おだやかな、とても幸せな時間でした。母は、グラスを窓の光に透かして、まるで少女のようにそれを眺めていました。そして突然言ったんです。それも万感の思いを込めるような声で。


「私、この家に生まれてきて良かったわぁ(おそらく語尾にハート)」


これには私も父も噴き出してしまいました。母が生まれたのは母の実家であって、この家であるはずがありません。母は真っ赤になって、「私、今何か言いましたか?え?え?」と大慌てしています。私も父も、腹を抱えて笑ってしまいました。そしてやっと笑い疲れて落ち着いた時、父が言いました。


「私たちはたしかにこの家を作るべく生まれてきた」


感動しました。本当に私はこの家に生まれてきて良かったと思いました。子供のころはいつもこの家が大好きでした。家族と過ごす時間が大好きでした。いつのまに、そうしたことを忘れていたのでしょうか。


母の言葉は、ただの言葉のアヤというやつだったのかもしれません。しかし私には、本当にここが生まれ育った家と錯覚してしまうくらいに好きなんだという気持ちの表れだったんだと思われました。そんなすばらしい家庭を、この家で生まれ育った私が大切にしないわけがありません。


そんなことが切っ掛けになって、私は家族で過ごす時間を大切に考えるようになりました。同僚にどうだい今夜はと声をかけられても、その日の夕食が自分のためのメニューだとわかっているような日は、お袋がご馳走作って待っててくれるから、なんていう言葉が自然と出てくるようになりました。


そんな転換を経て、私はイエはてなと出会いました。母のあの万感の思いを込めたような言葉を聞いていなければ、私はこのコミュニティに、何の興味も示さなかったと思います。


イエコトを楽しむ。暮らしのプチハッピーを積み重ねていく。そんな毎日の過ごし方こそ、私の人生の大転換です。母の一言が、その転換の切っ掛けを与えてくれました。


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