「クロの恩返し」by id:mekishiko


私がまだ子供のころの話です。


うちの近所を1匹の黒い犬がうろうろしていました。
うわさによると、引越して行った近所の家族が
置き去りにして行ったとのこと。


とてもおとなしく、かわいい中型の雑種犬でいた。
その犬は、毎日、我が家の飼い犬のご飯を食べに来ていましたが、
うちの犬は、事情を察していたのか、自分のご飯を食べられても
まったく怒ることなく、むしろ分け与えていたように見えました。
真っ黒なので「クロ」と名前をつけ、みんなで
頭をなでたりしていました。 


さて、それから数日経ったある日、
隣のオヤジが、うろうろしているクロを見て、
「保健所に連絡する」と話していました。


子ども心にも、大変だ!と思って、新しい飼い主を探すことに。


結局、親戚が引き取ってくれました。
その親戚の家には当時10歳の子どもがいて、
散歩から何から一生懸命に世話をしてかわいがっていました。
私が遊びに行くと、とても喜んで飛びついてきて、
顔をペロペロなめてくる。そんな姿を見るにつけ、
保健所行きにならなくてよかったと思ったものです。


さて、あれから10年が経ち、親戚の子は成人を迎え、
クロはすっかり年をとりました。
でも、とても元気だったので、まだまだ長生きしろよ、
そう話しかけたばかりのある日、
クロが車にひかれて死んだとの連絡が入りました。


詳しい事情はわかりませんが、
なんでも、成人を迎えたばかりの親戚の子の身代わりになって、
車にぶつかっていったという。
散歩中の悲しい出来事でした。


動物はとても賢く、受けた恩はけして忘れないと聞きます。
10年前、あやうく保健所に連れていかれるところを引き取って
もらい、かわいがって育ててもらったクロ。
最期の事故は、きっとクロの恩返しだったのでしょう。


クロのおかげで命拾いした親戚の子は、
今では立派な社会人になっています。


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