「伊豆諸島・小笠原諸島に伝わる〈島寿司〉」by id:TomCat


東京都には、本土を離れ太平洋上に浮かぶ島々も含まれます。そこに伝わっている独特の寿司「島寿司」をご紹介してみましょう。


伊豆諸島や小笠原諸島に握り寿司の文化が伝わったのは明治以降と言われていますが、本土から遠く離れた離島では、江戸前の握り寿司とは違う独自の発展を遂げてきました。


島寿司の特徴は、ネタが基本的に醤油漬けであること。島ですから新鮮な魚介類には恵まれていますが、「南の島」と言ってもいいような温暖な気候の島々では、やはり生ものの腐敗は早くなります。冷蔵設備のない時代に寿司を楽しむには、やはり醤油漬けは欠かせない技法でした。


また江戸前寿司のワサビの代わりに八丈島や小笠原では練りカラシが、伊豆大島では醤油に漬け込む段階で青唐辛子が使われるという特徴もあります。これはワサビが手に入らなかった時代の名残りです。ちなみに伊豆諸島では刺身を食べる時も青唐辛子か酢味噌というのが一般的で、ワサビを添えるようになったのはごく近年という話です。


ネタは島の近海で捕れるトビウオ、イサキ、オナガダイ、メダイなど。もちろんマグロやカツオも登場します。小笠原ではサワラが多いようです。


本土の握り寿司とは違う、鼈甲色に漬け込まれたネタの乗る独特の「島寿司」は、日本でありながら本土とは隔絶された地に残る独特の握り寿司です。握り寿司そのものが江戸時代以降に発展したものですから、こうした食文化は比較的近年に成立したものですが、それでもこんなに違いが出るんですね。今ではこれらの島々まで飛行機や高速船でひとっ飛びですが、ちょっと前まではいかに本土から遠い場所だったかがわかります。


東京都でありながら本土と異なる独自の食文化がある伊豆諸島や小笠原諸島。行く機会があったら、島寿司、ぜひ食べてみてください。


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