「私に「ふるさと」をくれたおじいちゃん」by id:watena


家族で祖父の家に遊びに行った私は、毎日が楽しくて楽しくて仕方がありませんでした。祖父も私が来たことを本当に喜んでくれて、連日山や川に私を連れて行ってくれました。私も、おじいちゃんおじいちゃんと祖父にひっついて回っていましたので、父の休みの終わりが近付いて家に帰る頃には、もう祖父の家から離れられないような気持ちになってしまっていました。
家に帰る日の前の晩、祖父が、楽しかったよ、また来いよと言ってくれたのをきっかけに、私は帰りたくないと泣き出してしまいました。おじいちゃんに抱きついて、離れたくないと、いつまでも駄々をこねていました。
けっきょく祖父母の取りなしで私はもう少しとどまっていいことになり、父母は先に帰ることになりました。それから約半月の間、私は祖父の子分のようになって、連日田舎の遊びに駆け回りました。祖父は面白いことをたくさん知っています。昔の子供の遊びをたくさん私に教えてくれました。
夜寝る時も祖父と布団を並べて眠りました。寝る前には、土地の珍しい古い話をたくさん聞かせてくれました。
そして田舎の子供のように真っ黒に日焼けした私を、祖父が家まで送り届けてくれました。一緒に列車に乗って、駅弁を買ってくれたり飲み物を買ってくれたり、帰りの道もそれは楽しい旅になりました。
祖父は一晩私の家に泊まって帰っていきました。さすがにその時はもう、離れたくないと駄々をこねてはいけないと思っていましたので笑顔で見送りましたが、やはり涙が出てしまいました。
あとで考えてみると、祖父は生業はもうリタイアしていたものの、地域の役職などがたくさんある忙しい身の人でした。その祖父が私のためだけに、いったい何日の時間を費やしてくれたことでしょう。また、矍鑠としていたとはいえ、もう高齢の祖父には、遠路私を家まで送り届けてくれたことも、大変な負担だったと思います。
都会育ちの私には「ふるさと」と言える場所がありません。でも、祖父と遊び回った山や川が私の「ふるさと」です。今でもその地に立つと、あの時の楽しかった思い出が昨日のことのように思い起こされます。祖父に連れられて遊び回っていた野山は、父が子供の頃に駆け回っていた野山と同じです。そのことが父と私をつなぐ絆にもなってくれました。
私に「ふるさと」をくれたおじいちゃん、大好きです。


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