「家の色彩を担当する母」by id:tough

わが家の色彩は、全て母の担当です。玄関に花を置いたりするのはもちろんですが、母の役割として特に重要なのが、室内の様々な色を季節ごとに変えていくことです。
子供のころからそうでした。家に帰るとまず玄関のマットが変わっています。あ、もうそんな季節かと思って家に上がると、カーテンの色も、ソファに掛けられたカバーの色も、電話機を乗せている台の敷き布の色も、ご丁寧にトイレの便座カバーの色まで変わっています。
家全体の色彩からすれば変化する面積はごくわずかですが、それでもあちこちが一斉に変わると、とても新鮮な気分になります。父も帰って来るなり、変わったねぇとあたりを見回します。
こういう家中一斉色彩転換が母の楽しみのようで、とにかく変える時は一日のうちに、それも家族がいない昼間のうちに全て変えてしまいます。
昼間忙しそうに動き回る様子を想像すると、各部屋のカーテンの掛け替えだけでも大変だなぁと思いますが、そうやって家の中に季節の変化を取り入れていくことと、家人に与えるサプライズが母の楽しみのようです。
もし母がいなかったら、わが家はモノトーンのようになってしまうでしょう。