「N君ちでご一緒したおじいちゃんの話し相手」

「N君ちでご一緒したおじいちゃんの話し相手」by ハザマ

遠い昔の話、小学校二年生の時のこと。近所に住む同じクラスのN君ちには、床に臥したおじいちゃんがいて、N君が午後の話し相手をするのが役割でした。学校から帰って、おやつをおじいちゃんの部屋で食べながら一時間ほど過ごすのです。
遊びに行くと、お母さんがおやつのお盆を持たせてくれて、おじいちゃんの部屋へ行くのですが、格式のある昔のおうちで、広い和室にお布団がぽつんと敷かれていました。その脇に座ると、「おかえり。今日は何の勉強をしてきた?」「体操でケガはしなかったか?」など聞かれてぽつりぽつりお話します。「お友達もお菓子食べてるか?」と私のことも気遣ってくれたり。N君は必ず「何かいるものない?」とご用聞きもしました。たいていは「ないよ」と返されますが、「冷たいお茶を」と言われたこともありました。
初めて行った時はよくわからず、どうしておじいちゃんの部屋に行くのか尋ねたものでしたが、N君は「僕が行くと一番喜ぶから、お母さんもそう言ってるから」と、毎日続けているのでした。N君は一人っ子で、孫は一人だけでしたから。
その後に、N君のお部屋で子供向け科学雑誌の付録で実験したりして遊んで過ごすのですが、いつも、N君はえらいなぁ優しいなぁと子供心に尊敬していました。今も、あれは思いやりに満ちたN君の役割だったなと思い出します。

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