「わが家と暮らしのなかにある、幸せの色」

#005テーマ
「わが家と暮らしのなかにある、幸せの色」


さて、今日は“ディア・ライフ”#005の語らいのスタートです。イエと暮らしの愛しい物語、今回のテーマは「わが家と暮らしのなかにある、お気に入りの色」。今のイエ、かつて暮らしたイエ、そしてお部屋の中にあるものでもお庭やベランダのものでも、みなさまはどんな色が幸せに目に浮かびますか? そしてそれは、どんな光景やエピソードを物語る色でしょうか? ぜひみなさま自由に思いをめぐらせて、幸せのストーリーを聞かせてください。“ディア・ライフ”第5章、今回もココロをてのひらで包んでくれるようなあたたかな語りを、楽しみにお待ちしています!


“アイデア・タイトル”
「母が編むレースのクロスやドイリーの白」
by hazama


“メッセージ”


わが家を物語ってくれる色……思い出されるのは、母がこれまで趣味にしてきたいろいろな手仕事の品でした。私たち姉弟が小学校に上がってお稽古事にも通うようになった頃から、母は自分でもいくつかの習い事をはじめました。籐かご編み、ペーパーフラワー、アートフラワー、それに若い頃から好きだった毛糸やレースの編み物。


私が学校から帰ってくると、よく母はお稽古の宿題で持ち帰った仕事に手を動かしていました。よく覚えているのは、いろいろな質感の布をそれぞれに染めて、型に切って、熱いコテで波や筋を入れながら花びらや葉を作っているところ。白い百合、赤いシクラメン、色とりどりのパンジー、黄色いバラ……次々と作り上げては花瓶や籐かごにアレンジメントしてイエじゅうにディスプレイしていました。


そして、そんな手作りの花たちの下には、いつとはなく編んでいた白いレース編みのドイリー。応接間のテーブルやローボードにも、大きなレースのクロス。それらは花のディスプレイや家具を引き立てながら、いつもやさしく清楚な表情でイエのあちらこちらを包んでくれているようでした。


日頃の縫い物でも何でも器用にこなす母でしたが、趣味のアートフラワーやレース編みに向かっている時は、特別に目を輝かせていたものでした。私はそんな母の姿を見るのが何となくうれしくて、好きだったものです。こんなに綺麗なものを次々に手から生み出してみせる母が誇らしかったのか、あるいは今思うと、朝から家族の世話に明け暮れてきた日々のなかで、わずかながら持てるようになった自分の時間に夢中になっている母の姿をみて、ほんの少しだけわかったのかも知れません。


そんな光景を思い出しながら、一番私の心に残るのはやっぱり、さまざまな彩りとともに敷かれていた、白いレース編みの佇まいです。母の手から生まれ、イエじゅうを彩ってくれたとりどりのフラワー、そこに敷かれた真っ白なレースのクロスやドイリーは、いきいきとした母の心のように、私たち家族の心をふわっと明るく照らしてくれていたものです。


それから私たちが中学・高校と進むにつれて、また忙しい毎日に追われるようになり、母は自分の手を動かす時間をなかなか持つことができなくなりました。家族の暮らしのモノも増えて、フラワーやドイリーは少しずつ棚に上げられたり、箱にしまったりされるようになりました。


それから長い月日が経ち、あれは7、8年前のことだったでしょうか。私は母の誕生日にプレゼントを考えていて、ふっと思い立ったのです。今は時間もある母に、ふたたびレース編みを作ってもらいたい、パターンの本と白いレース糸を贈ろうと。母は思った以上によろこんでくれました。私がリクエストしたモチーフ編みのクロスが、2週間後には出来上がって送られてきたほどです。以来、母はまた少しずつレース編みを作り、実家のテーブルや玄関をふたたび彩りはじめました。友達にもずいぶんプレゼントしているよう。


こうしてわが家に、そして母の心に、ふたたび光のようなレースの白がよみがえりました。今もあの頃と同じ、ふわりとやさしい白。もちろん今の私の部屋にも光っています。


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※今回の「いわし」ご投稿は9月21日(火)正午で終了とさせて頂きます。
※今回のピックアップ賞は9月21日(火)に「イエはてな」にて発表いたします。
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