「今も耳に響く……イエの音、家族の音」

#001テーマ
「今も耳に響く……イエの音、家族の音」


さて、今日は“ディア・ライフ”#001の語らいのスタートです。これまで“イエ・ルポ”としてイエや家族のエピソードを語っていただいてきましたが、コンテンツ・タイトルも新たに、とりわけみなさまの胸に刻まれた「愛しい日々」を、ショート・エッセイを綴るように書き伝えて下さいませんか? 今回のテーマは、「今も耳に響く……イエの音、家族の音」。うんと以前には、「音楽のあるイエの思い出」というテーマで語り合ったことがありましたね。今回は音楽はもとより、かつてイエで耳にしていた懐かしい音や、今のイエで愛しみを感じられている暮らしの音を、どんなことでも。何気なく耳にしていた音の記憶から、さまざまな暮らしの光景が物語として浮かび上がってくると素敵ですねw さて、“ディア・ライフ”1ページ目、どんなシーンが綴られるでしょうか。みなさまからのメッセージを楽しみにお待ちしています!


“アイデア・タイトル”
「父が帰る車の音に耳を澄ました夜」
by hazama


“メッセージ”

あれは中学生の頃からだったでしょうか。静かな夜、FMラジオの小さな音をかたわらに、私は毎晩机に向かってノートや本をひろげながら、外の気配に耳を澄ましていました。仕事で遅くなる父の帰りを待っていました。時計はたいてい11時頃。
ブルン……イエよりうんと下の橋から、坂を上がってくる車の音。父のエンジンの音は毎夜同じで、すぐに聞き分けられます。帰って来た! 私はノートを閉じて、寝静まったイエの玄関へ向かい、鍵を開けます。イエの前に着いた車からバタンとドアを閉める音がすると、玄関を開けて「お帰りなさい!」。背広姿の父から重い仕事鞄を受け取ってダイニングまで運ぶのも私の役目です。

朝5時に起きてお弁当や朝食と忙しい母は早寝なので、私が父の夕食と晩酌のおともです。といっても、母が用意した夕飯をあたためて、器によそって並べるだけ。そのテーブルで父は、新聞やニュースの話、会社であったことや、聞いてもよくわからない仕事の話をしてくれるのです。その頃、まだ学校しか知らない私には、父の話が大きな世界への窓のようなものだったんですね。ちょっと大人になった気分がしたからかしら。私は父の話を聞くその少しの時間が楽しみで、毎夜寝ずに待っていたものです。父も、早く寝なさいとは言わなかったな……。もちろん、父がバスルームに向かう時に私は眠りに就くのですが、ダイニングで父と話をするとようやく一日が終わったような、安堵した気持ちで眠れるのでした。

それは私が高校を卒業して進学でイエを出るまで、ずっとつづいた日課でした。FMラジオの音をかすめて聞こえる父の車の音。静まり返った夜の道を、うちへと近づくエンジンの音。ブルン、ブーン……それは今でも耳の中に響いて聞こえる懐かしい音です。


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※今回の「いわし」ご投稿は5月24日(月)正午で終了とさせて頂きます。
※今回のピックアップ賞は5月25日(火)に「イエはてな」にて発表いたします。
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