「あなたのだるまさんの色は何色?」by id:Lady_Cinnamon


 だるまさんといえば真っ先に浮かぶ色は赤だと思います。日本におけるだるまの80%を生産している群馬県高崎だるまは、もちろん真っ赤なだるまさんです。


 高崎だるま(少林山達磨寺)
 http://www.daruma.or.jp/index.html


 だるまというのは元々は室町時代に流行した、玩具の起き上り小法師の一種なのだとか。また、だるまさんが赤い理由ですが、少林山達磨寺さんのサイトやウィキペディアでも紹介されているように、起き上り小法師のモデルにインドの達磨大師の姿を重ねたからです。


 達磨大師禅宗を開いたお坊さんでして、嵩山少林寺で壁に向かって九年間座禅を組み続け、ついに悟りを開いたという通称「面壁九年」の言い伝えがあります。古典画の姿絵からも判るように、面壁九年の時の達磨大師の姿は、赤色の袈裟を頭からかぶった座禅姿。ですのでだるまの歴史では、最初の頃は座禅姿のだるまさんが主流だったようです。


 そのうちお寺に通う養蚕農家が、「七転び八起き」の起き上がり小法師であるだるまに、蚕が脱皮を繰り返して繭玉をたくさん作ってくれるようにと願かけするようになってから、だるまさんの姿は座禅姿から繭型へ、今ではずんぐりとした丸型になりました。なお、地域によってはかぼちゃ型や面長型、顔のデザインもひげの濃いものから愛媛・大分の姫だるまのように女性版もあります。


 だるまが赤いのは達磨大師の袈裟の色からも来ているのですが、そもそも赤は厄除け・魔除けの色であり、はやり病の疱瘡を引き起こす疱瘡神が嫌う色だったからという説もあります。だから親は子供に赤いだるまさんを玩具として渡し、健康祈願をしていたわけです。


 そんなだるまさんも、今では赤色だけではないんですよ。東京だるまのように金色・銀色の物もあれば、静岡県西伊豆にある五色願かけだるまのように、仏教における宇宙の五元素、五大「空風火水土」を象徴する色「青、黄、赤、白、黒」を五色に塗り分けただるまさんもあるんです。


 また静岡県の藤枝だるまも基本は赤ですが、現在では青、黄、橙、桃、白、黒、緑、黄緑、紫(藤枝なので藤色)と10色のカラフルなだるまさんが販売されています。おそらく、願い事のある人たちも好む色は多種多様であろうということで、どんな色でも願いを叶えてくれるようにとカラフルなだるまさんを製作されてらっしゃるのだと思います。


 藤枝だるま




 こちらはミニサイズ。カラフルでコロコロした姿が可愛い。


 下記のサイトでは、藤枝だるま店・五代目の長橋秀明さんによる、藤枝だるま話が掲載されています。藤枝だるまの製作動画もありまして、木型に和紙を張り付ける張り子作業だけでなく、起き上がり小法師になる土台の陶器を組み込む様子も分かりますよ。


 しずおか社会見学 タイケンダー
 http://taiken.cocolog-tnc.com/rabicon/2009/04/post-12db.html


 なお、タイケンダーで紹介されている藤枝だるま店は、すべてのサイズとカラーが揃っていますが、JR藤枝駅からもかなり離れた商店街(旧東海道沿い蓮華寺池公園近く)にあるお店です。もしもこの記事を読んで、藤枝だるまが欲しいと思ってくれた方がいてくれたとしても、特に都会にお住まいの方はここまで訪ねるのは大変だと思います。


 と言いつつ、このお店の周辺は静岡県中部でも、隠れた散策スポットなので、サプリテーマからは脱線しますが、イエはてなさんでは建築に詳しい方もいらっしゃるので、商店周辺のお勧めポイントを紹介させてください。


 1つ目は散策の日取り。蓮華寺池公園は藤の花咲く5月の藤祭りや、8月の花火大会で有名でお勧めの時期です。2つ目は歴史好きな方や文学通の方へ。東海道・藤枝宿の話題はもちろん、藤枝は鎌倉〜江戸時代に名を残した今川氏の歴史の残るマチです。また『アポロンの島』で知られる小説家、小川国夫の生家があり彼は藤枝で執筆活動を続けました。公園内の郷土博物館と文学館で資料展示がされています。


 3つ目は建築に興味のある方へ。あのル・コルビュジエや、フランク・ロイド・ライトの弟子のアントニン・レーモンドの元で学んだ、モダニズム建築家・前川國男が建てた図書館が近くにあります(岡出山図書館)。前川國男でピンとこない人は、丹下健三が前川事務所の出身なんです・・・。丹下健三を知らない方や建築史を知らない方には、この凄さを解ってもらえないかもしれませんが、丹下健三は「世界の丹下」とも呼ばれ、文化勲章も受章しており、最近の有名な建築家でいえば磯崎新黒川紀章を育成した方です。


 そんな日本の建築史に名のある建築家の作品が、静岡の(失礼)しかも藤枝なんて田舎に(これまた失礼)あるとは珍しいことです。だからといって手抜き建築ではなく、建物は小振りながらも前川流の小洒落たレンガ風。建築好きというかオタクな方にはお勧めスポットです(図書館向かいのお蕎麦屋さんはかなり美味しいですよw)。


 では、話題を藤枝だるまに戻します。市内散策までは行けないけれど、このだるまさんが欲しいという方はこちら。JR静岡駅アスティ内にある駿府楽市、JR藤枝駅北口にある藤枝市観光案内所、車でなら国道1号線から静清バイパス旧東海道の丸子宿・丸子梅園や丁子屋近く)にある体験工房「駿府匠宿」(http://www.sunpurakuichi.co.jp/takumi/index.html)でも販売されています(富士山静岡空港売店では現在販売されていないそうです・・・残念)。


 なお、静岡県の郷土だるまにはまだ種類があるのですが、先程紹介した西伊豆にある五色願かけだるまは瓢箪型で顔もユニーク。藤枝だるまとは異なり、色毎に願い事も変わります。こちらは富士見山達磨寺がJR修善寺駅からも遠く交通の便が悪いということで、お寺だけでなくネット販売をされているそうです(http://toi-daruma.jp/)。


 定番の赤いだるまさんは厄除けの意味で家内安全、交通安全、健康祈願、安産祈願など行われますが、他にも精神的強さを表す色として合格祈願、選挙当選の祈願も行われます。また他の色には、穀物の実りの色である黄色で商売繁昌・金運向上。清き白では良縁祈願、黒は魔除けとして厄災消除と願かけ内容が異なります。


 だるまさんは七転び八起きの縁起を担いだだけでなく、色の持つ力も合わせて祈願成就や福をもたらしてくれます。元々は玩具でもあるだるまさん。手に取った人たちの願いが込められ、普通の玩具から縁起物として親しまれるようになりました。さて、色を選べるとしたら、あなたは何色のだるまさんを選びますか?


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