「あなたが出会った、語りたい〈素敵な家族の肖像〉」を教えて下さい

#051 お題
あなたが出会った、語りたい〈素敵な家族の肖像〉」を教えて下さい


“ルポ・タイトル”
「親子でライブ、ギターと美しい声で歌うその歌は…」
by ハザマ


そのご家族とは、友人を通して10年ほど前に知り合ったのでした。廃物で面白いオブジェを作ったり、好きな音楽を作ってはひそかに友人知人に披露していたご主人のS司さん。普段は大学で英文学の教職に就いておられます。私がはじめて友人に連れられてお宅に遊びに行った時から、誰彼わけへだてなくまるで少年のように自分の好きな文学や音楽を語る純粋なハートで、うんと年長の方だけどすぐに友達として迎えてくれました。
かたわらでS司さんのお道楽人生を一緒になって支えているのが奥様のN子さん。日々を嬉々として楽しむまるで学生カップルのようなお二人には、2人の大きな息子さんがいらっしゃって、当時は「ヘンな人をいろいろうちに連れてくるヘンな親だなぁ」というまなざしで見ていたような気がします(笑)。


出会って間もなく、S司さんは自分でバンドを組んで本格的にライブ活動をスタート。奇妙な幻想を抱く少年世界を次々と曲にして、みるみるファンが集まり、すぐに小さなレコード会社からアルバムもリリースされました。私もライブを観に行ったり、自宅録音の最中に遊びに行ったり、そのたびにN子さんの手料理で夕飯をごちそうになったりと、すっかりS司ファミリーの一員に。いつも今作っているモノや曲の話を夢中になって話して私たちを楽しませるS司さんの、歳を重ねてますますピュアな心に引き込まれていきました。


そして最近になってまた新たな活動でS司さん一家は私たちを驚かせました。大学受験を控えた高校生の次男坊Rくんと二人で親子ユニットを始動させたのです。これまでのライブでも、Rくんが1、2曲ギターとコーラスで参加するようになっていました。しかし、あることをきっかけに、本格的に父子のユニットでも活動することになったのです。
あるきっかけとは…。以前からよく聞かされていた、20代の若さで事故で命を失ったS司さんの弟さんの話。その弟さんもアコースティックギターと音楽をこよなく愛し、生前に未発表の楽曲をたくさん残していたのです。S司さんはいつかこれら100曲を超す遺作を世に送り出したいと語っていましたが、ついに決意。次男坊Rくんがその弟さんの曲を歌いたいと言い始めたことで、親子二人のユニットが誕生しました。


昨年の暮れに奥様N子さんから電話をもらい、お鍋をするからいらっしゃいというので、友人と二人でお邪魔しました。その時に親子ユニットのお話を聞き、食事の後のリビングで、S司さんとRくん、ギター2本のアコースティックライブがはじまりました。今ちょうど練習中なんだといって。S司さんがリードをとる曲、Rくんが歌ってS司さんがコーラスする曲、どれも二人の美しく澄んだ声が、今は亡き弟さんの歌を今に甦らせていました。そして今年の2月はじめ、渋谷のライブハウスで初のお披露目ライブ。素晴らしかったです。S司さんのバンドのファンもみんな、新たな家族ユニットの誕生に感動しきりでした。たった今、美大めざして受験真っただ中のRくんですが、受験が終わったら、弟さんの曲とこの二人のユニットでCD作りをはじめるそうです。


もちろんS司さんには教職がありますし、Rくんも音楽の勉強のためにこれから大学で勉強です。その一方で、親子、そして亡き弟さん(Rくんにとっては叔父さん)も一緒の家族の音楽ユニットの活動はつづいていくことでしょう。こんな素敵なライフワークで結ばれたS司さん一家。私にとっても得難く大切な家族の肖像です。


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※今回の「いわし」ご投稿は2月25日(木)正午で終了とさせて頂きます。
※今回のピックアップ賞は2月26日(金)に「イエはてな」にて発表いたします。
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